【大手鋼管流通ニッコーの経営戦略】〈島田光路社長〉鋼管加工業者との連携サービス拡充 拠点・品種のシナジー狙いM&A推進

 7月、メタルワンと住友商事の国内鋼管事業統合の検討開始が発表された。商社系鋼管特約店の今後の動向が注目される中、伊藤忠丸紅鉄鋼100%子会社の鋼管特約店ニッコー(本社・千葉県浦安市)の島田光路社長は「鋼管加工業者と連携した独自サービス『ニッコー・クラスター』事業とあらゆるシナジーを考慮したM&Aの推進」という独自路線を貫く。島田社長に今期これまでの業況と今後の経営戦略を聞いた。(後藤 隆博)

――今期、これまでを振り返って。

 「予算計画比でほぼオンラインできている。当社の主力向け先の一つである建機向け需要が回復してきたのが大きい。ステンレス鋼管の販売も堅調を維持。昨年下期から今上期にかけて市況が回復したことも要因。今期は少なくとも、当初予算はクリアできると思う」

ニッコー・島田社長

 「拠点ベースで見ると、建機向けの商売が多い北陸営業所(石川県小松市)、土浦営業所(茨城県かすみがうら市)は好調。一方、浦安に拠点を置く東京鋼管部と東京ステンレス部は明暗が分かれている。ステンレスは比較的堅調も、普通鋼中心の鋼管部が扱う品種は、まだ強い需要は感じられない。今後、実需好転に期待感はあるが、下期に向けてメーカーの値上げをいかに転嫁できるかがポイントになるだろう」

――鋼管加工業者と連携した独自サービス「ニッコー・クラスター」事業について。足元の受注状況と今後の目標は。

 「サービスを開始して4年目になるが、いたって順調だ。売上高は毎年前年比50%ずつ伸びており、リピート客、新規ともに増えている」

 「加工協力会社(クラスター・メンバー)は現在100社ほど。今年3月には、これまでの新規事業室とプロジェクトチームを統合して新規事業・プロジェクト部に格上げし、クラスター事業を管轄。本社営業部隊のある東部営業本部内に主力拠点を移し、クラスター事業と既存営業とのコラボも推進している」

 「今後は、各営業マンのコーディネートスキル向上なども課題。メーカーとユーザー双方からのアプローチで顧客の輪を広げ、将来的には全社売上高に占めるクラスター事業の売上高を10%くらいまでにもっていきたい」

――昨年10月、兵庫・姫路市で各種鋼管の加工・販売を手掛ける特約店ヤマトを子会社化した。

 「我々は元々ヤマトと友好的な取引関係にあった。同社は本下前社長が1981年に創業。プラント向けなど鋼管の販売・加工を主としている。オーナーである本下氏の後継者問題に際して社員とも相談するなど検討されていたが、今後の事業存続・発展を第一に考えて同社の経営方針やビジネスモデルを熟知しているニッコーとのパートナーシップを選択された。本下前社長は会長として経営陣に残られ、全従業員も継承している。統合直後の昨年11月には近隣の土地を購入して加工設備・在庫ヤードの拡充を行い、第二倉庫・工場として今年5月に稼働している」

 「物流倉庫関連の部材が今非常に伸びている。また、ニッコーにとっては山陽道での新たな拠点となり、総合的なシナジーが見込めると判断した」

――ヤマト以外のM&A戦略については。

 「拠点や品種でのシナジー効果が重要なポイントだ。メーカーが集約されたことによる商流の変化や後継者問題などに悩むオーナー系特約店も多い。強引に進めることはないが、良い話があれば積極的に考えていき、シェアも上げていく」

 「25年前にグループ会社になった阿久比ニップルでは、特殊品のニップル製造を行っている。ニッチな世界ではあるが市場での存在意義はあり、安定的に収益確保している」

――商社の鉄鋼事業再編が進む中、メタルワンと住商鋼管が国内鋼管事業統合の検討を発表した。こうした一連の動きをどうみるか。

 「検討開始が発表されて間もないこともあり、具体的統合範囲など、まだ分からない部分が多いので何とも言えないが、よく状況を見極める必要がある。一方で我々は、伊藤忠丸紅鉄鋼鋼管事業においてはこれまでどおり、同社鋼管部はもちろん他のグループ会社である三陽商会、協成、太平産業との連携に引き続き注力していく」

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