【世界の街から】秘密主義を実感

ロシア軍取材のミステリーツアー

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ロシア北西部レニングラード州のルシスキー演習場で公開された軍事演習=9月(共同)

 ロシア軍が外国の記者や武官を招いて公開した軍事演習。その取材ツアーは、25年間の記者人生で最悪の経験だった。

 国防省前には報道陣約150人が集まったが、案内役の高官が現れたのは、集合時間の1時間後。いいかげんな点呼の後、記者らを詰め込んだバス3台がようやく動きだした。

 行き先も、宿泊先も、一切説明しないミステリーツアー。モスクワ郊外の軍用空港から旧式の旅客機に乗せられ、サンクトペテルブルクへ。日が暮れる中、バスに乗り換えた。みな携帯電話で現在地を調べ、夕飯の心配をしている。

 夜10時、バスは突然停止。「四つのホテルに分宿する。明日は7時半出発」と高官が説明する。だが、誰にどのホテルを割り当てるのか、その場で作業を始める始末。投宿までの8時間、飲食物はイチジク1個が配られただけ。水も買えなかった。

 翌日、土砂降りの演習場に到着。すし詰めのテントでひたすら待つ。雨が弱まる中、プーチン大統領がヘリコプターから降り立ち、鳴り物入りの演習が始まった。

 野外に立って見守る武官や報道陣を前に、数多くの戦車やヘリコプターが登場。砲弾を連射し、爆音をとどろかせて“敵の陣地”を制圧する。40分間の戦勝シナリオに、ガラス張りの特別室にいた大統領は、さぞ満足したことだろう。

 近隣諸国は、演習は公式発表の約8倍の10万人規模で、威嚇が目的だと訴えてきた。だが軍幹部は懸念をよそに、記者の質問にまともに答えず、攻撃能力を強調するばかり。見せたいところだけ見せる軍の体質と、秘密主義を実感した。(共同通信=モスクワ支局・佐々木健)

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