<レスリング>【愛媛国体・特集】留学生を破って沖縄県勢初の高校五冠王者に! 仲里優力(沖縄・北部農林)

(文・撮影=増渕由気子)

五冠制覇の仲里優力(沖縄・北部農林)と屋比久保監督

 6年越しの沖縄県勢の悲願達成! 愛顔(えがお)つなぐえひめ国体の少年グレコローマン120kg級は、インターハイ王者の仲里優力(沖縄・北部農林)が決勝で昨年同級2位のアビット・ハルーン(千葉・日体大柏)を2分45秒、テクニカルフォールで下して優勝。高校の全国大会をすべて制し、史上11人目の高校五冠王者に輝いた。

 2010年の沖縄インターハイをきっかけに、沖縄県勢からは多数の全国チャンピオンが誕生したが、高校タイトルをコンプリートしたのは仲里が初めて。仲里は「先輩たちもやれなかったことを成し遂げて、ひと安心です。周りからのプレッシャーが大きかった」と、ホッと胸をなで下ろした。内容も「全部テクニカルフォールで圧倒的に勝てて良かった」と完璧だった。

 高校レスリング界の重量級は、ここ数年で勢力図が激変。昨年のインターハイ団体のMVPは日体大柏(千葉)のモンゴル人留学生が受賞するなど、強靭なパワーを擁する留学生が席巻する時代に突入した。仲里も「去年のインターハイでは留学生に負けた。今年もハルーン選手がいるのでどうなるのかなと思っていた」と脅威に感じていた。

 しかも普段の練習相手に関しては、日体大柏に分がある。沖縄に仲里と互角に闘える選手はいない。ハンディがあるのは目に見えていたが、「3年生になったら自分がトップになるんだと思って練習を追い込んできた。練習量では負けてない」と強い気持ちで乗り越えた。

決勝で留学生を破って優勝を決めた仲里(赤)

 体力面は沖縄で作り、技術面では長期休みが取れるときに遠征して大学生の胸を借りて強くなった。「大学での遠征は貴重な体験。その時にいろいろ覚えたことを大切にしてやってきた」と環境のハンディを跳ね除けての勝利だった。

 屋比久保監督は「留学生のパワーは強く、去年はそれにやられました。仲里は頭がいい。一度負けたら、パワー勝負から崩しをうまく使って勝てるようになった」と絶賛し、県勢初の快挙を称えた。

 仲里の五冠王者達成は、屋比久監督にとってやっとの思いで獲った栄冠だ。「実は、2011年に与那覇竜太が県勢初の五冠王のチャンスがあったんですが、その年は東日本大震災で全国高校選抜大会が中止となり、与那覇は四冠だったんです」。幻の五冠王から真の五冠王を獲らせるまで6年の月日が流れていたことに「感無量です」と、監督も満面の笑みをこぼした。

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