【熊本城のいま】石垣の解体、範囲で激論

9月の学識者の部会で了承された小天守北側石垣の解体範囲。赤いラインの上部を積み直す

 熊本地震で被災した熊本城の石垣のうち、熊本市の調査では崩落したり緩んだりして積み直しが必要とされる面積は、全体の約3割にあたる約2万3千平方メートル。このうち崩落した約8200平方メートルの復旧に異論はない。だが、緩みや膨らんだ部分については、どこまで手を入れるかに議論がある。

 熊本城の石垣はすべて国の特別史跡。災害復旧とはいえ、一度解体すれば、その部分は「平成の積み直し」となり、オリジナルの石積みが失われるからだ。

 「実際の現場で変更になる部分はあるかもしれないが、今回出された解体ラインで了承だ」。櫓[やぐら]や石垣の復旧方針を議論する市の特別史跡熊本城跡保存活用委員会の文化財修復検討部会(12人)。9月28日の会合後、部会長の田中哲雄・日本城郭研究センター名誉館長はこう語った。

 部会では、優先して復旧工事が進む天守閣の石垣の解体範囲について話し合ってきた。天守閣の外側の石垣は一部を除き、多くが江戸時代のまま。6月の会合では、市が出した解体案に対して、委員は「江戸時代の石垣をこんなに外す(解体する)のか」と猛反発。「資料の作り方にも問題がある」とされ、市に再考を迫った。

 緩みや崩落の範囲が最も広いのは小天守北側だ。当初は3分の2ほどを解体する案だったが、市がさらにデータの検証を進めた結果、9月には解体予定範囲を縮小。ようやく委員の了承を取り付けた。

 「文化財である石垣をなるべく解体したくないのは当たり前で、石一つでも外さないようにしたい。一方で不安定な部分は、安全に仕上げたいという施工側の思いもある」と熊本城調査研究センターの金田一精さん(49)。文化財的な価値と安全性の確保の両立に、現場は苦悩している。

 天守閣の復旧工事で次の課題は積み直す方法だ。金田さんは「ほかの櫓に比べて天守閣の石垣復旧は特殊で難しい。支柱に支えられた建物が石垣の上にあり、穴蔵(地下室)もある。どうやって石を外し、積んでいくか。課題は多い」と話している。(飛松佐和子)

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