紅白戦の思いがけない副産物、ソフトバンクが秘める左腕王国誕生の可能性

クライマックスシリーズ(CS)のファイナルステージへ向けて調整を進めているソフトバンク。ペナントレース最終戦となった10月8日の楽天戦(Koboパーク)を終えると、2日間のオフを挟んで、11日から全体練習を再開させた。

ソフトバンク・古谷優人【写真:藤浦一都】

名左腕で鳴らした工藤監督も期待「楽しみだね」

 クライマックスシリーズ(CS)のファイナルステージへ向けて調整を進めているソフトバンク。ペナントレース最終戦となった10月8日の楽天戦(Koboパーク)を終えると、2日間のオフを挟んで、11日から全体練習を再開させた。

 1週間の調整期間。実戦からも遠ざかるため、工藤公康監督は4試合の紅白戦を組み、選手たちに試合感覚を養わせる対策を取った。もちろん、この紅白戦は、CSに向けて投打の調整というだけではなく、CSメンバーの当落線上にいる選手たちのアピールとふるい落としの意味合いが強い。

 ところが、だ。この紅白戦には、それだけではない楽しみがあった。それが、ソフトバンクの未来を担う若手投手たちの存在だ。「若手の見本市」にもなった紅白戦。2試合目を終えた12日、工藤監督は帰り際に「楽しみだね。左腕王国になればいいよね」と呟いた。

 左腕王国――。それを期待してしまうほど、今のソフトバンクの若手には好素材が揃っている。11日の1試合目、まず登板機会を得たのは、ルーキーで育成選手の長谷川宙輝(ひろき)。4回からマウンドに上がると、5回に江川智晃にソロ本塁打を浴び、2回2安打1失点の内容だった。

 2016年の育成ドラフト2巡目でソフトバンクに加入したルーキー。背番号は134だ。東京の聖徳学園高出身で、プロ入り後に平均球速が約10キロアップするなど、1年足らずで急成長を遂げた。高校時代は144キロだった最速も149キロに。まだ19歳と、底知れない可能性を秘めている。

 長谷川以上にインパクトを残したのは、2試合目に投げたドラフト2位ルーキーの古谷優人。4回からマウンドに上がると、今季本塁打王と打点王の2冠に輝いたデスパイネを空振り三振に斬るなど、2イニングをパーフェクト。3つの三振を奪い、最速は147キロだった。北海道の江陵高時代に最速154キロをマーク。プロ入り後にも、153キロを記録しており、その秘めたる可能性の大きさは計り知れないものがある。

2014年ドラフト4位笠谷、2015年育成2巡目の児玉にも期待

 この2人に加え、2014年のドラフト4位・笠谷俊介も、今季成長の跡を見せた1人。オフに和田毅に弟子入りして自主トレを行うと、これが転機となった。8月23日の西武戦(ヤフオクD)で1軍デビューを果たし、今季1軍で3試合に登板。最速も149キロまで伸ばし、ウエスタン・リーグでは13.06の奪三振率をマークしている。12日の紅白戦2戦目に登板した時は1イニング持たずに3失点と炎上したが、来季以降の飛躍が期待される1人である。

 さらに、この2戦目には、こちらも育成選手の児玉龍也が登板した。2015年の育成ドラフト2巡目。九州国際大付属高から神奈川大学を経て、ソフトバンクへ。高校では楽天・三好匠、DeNA・高城俊人が同級生だった。この児玉は、ややトルネード気味のフォームから左サイドハンドで投げる変則左腕。6回のマウンドに上がると、1安打を打たれたものの、無失点に封じた。こちらは左キラーとして楽しみな存在だ。

 右投手には、3年目までに今年プロ初勝利を挙げた松本裕樹や1軍デビューを果たした高橋純平と小澤怜史、そしてドラフト1位ルーキーの田中正義という好素材がいる。1軍ローテを担う投手も、東浜巨が27歳、千賀滉大が24歳、武田翔太も24歳(千賀の1学年下)と、まだ成長途上の選手ばかりだ。野手の底上げには物足りないところはあるが、投手だけでいえば、将来性豊かな若い力がゴロゴロ。投手王国、左腕王国としての土台は、着々と固められている。そう感じさせられる紅白戦だった。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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