【工場ルポ】〈アルコニックスグループ大川電機製作所(上)福島工場〉多様な業界に精密切削加工品供給、加工効率の引き上げ推進

 精密切削加工を手掛ける大川電機製作所(本社・東京都世田谷区、社長・中山裕之氏)は、アルコニックスグループの製造会社として大きく事業規模を広げている。大型加工設備と高い精度を武器に、半導体・液晶製造装置や航空宇宙分野の需要家からの信頼も厚い。同社の福島工場と上名倉工場を訪問した。(遊佐 鉄平)

 大川電機製作所は1951年12月、東京都で創業した町工場だ。板金・機工部品、スナップスイッチ部品の製造・組立を手掛けていたが、60年代に切削加工業へ進出した。世田谷区桜新町に本社・工場を持っていたが、89年に福島工場(所在地・福島県福島市庄野字石塚)が竣工、98年には東京の製造部門を福島工場に全面移転した。2009年にアルコニックス子会社となって以降も、工場拡張を実施するなど事業規模は拡大を続けている。

 精密切削加工を手掛ける同社だが、販売先はこの10年間で大きく変化した。アルコニックスグループ入りする以前は、売上高のおよそ8割を通信機器用部品が占めていた。しかし09年以降に新規開拓を進めたことで、半導体・液晶製造装置用部品や航空機部品などが増加。16年度実績では全体のおよそ50%が半導体・液晶・有機EL製造装置向け、防衛航空向け20%、通信機器向け5%、医療機器向け2~3%、その他20%という構造に変化した。取引先の増加だけでなく需要業界が多様化したことで、特定顧客の注文量に左右されない経営基盤を作り上げた。

 主力製造拠点の福島工場は、東北自動車道・福島西インターチェンジから車で5分程度の距離にある福島西工業団地に立地している。1万2130平方メートルの用地にA館からE館まで五つの建屋(延べ床面積5058平方メートル)が〝コ〟の字に配置されている。1989年に稼働してから3度増築し、主力製造拠点として小型から大型までさまざまな切削加工設備を導入して加工ノウハウを積み上げてきた。

 創業当時から存在するA館は、長らく大手電機メーカー向け通信機器用部品を加工するための設備を中心としたレイアウトとなっていたが、需要業界の多様化に合わせて各種製造装置などの小型部品を造るための小型・中型加工機が並ぶエリアに変わった。B館には、多段パレットで効率的な段取り替えができる自動横形マシニング加工機、旋盤加工機、同時5軸加工機が集約されている。

 C館には特に大型部材の加工ができる加工機が集約されている。これら立形・横形の大型加工機は主に半導体・液晶・有機EL製造装置の大型部材を担当。オペレーターは、それぞれが複数台数を受け持つことで加工効率を高めている。D館には、バリ取りなどのハンドワーク部門や検査部門が入居している。

 E館で実施する精密洗浄も精密加工に並ぶ同社の強みの一つだ。クラス1万のクリーンルーム内で超純水超音波洗浄を施し、クリーンオーブンで乾燥後に脱気二重梱包するもの。不純物の混入を防ぐサービスは好評だ。

 大小合わせれば70台近い設備群が同社の加工対応力の源泉だが、台数だけでなく生産効率を高める取り組みも進んでいる。工場のすべての加工機は、社内のモニタリングシステムと連結されており、パソコン上からでも稼働状況を確認できる。「東京の社長室からでも設備の稼働状況がわかる」(古川隆常務執行役員)という。こうした稼働状況はデータとして保管し、非稼働の原因を追究して作業工程の見直しにつなげている。

 増築を続けてきた福島工場は、すでに工場の余力スペースがほとんどない状況だ。こうした状況下で、さらに加工能力をアップさせるためには、「設備稼働率のさらなる引き上げや不良品発生率の低減がテーマとなる」(同)。16年に稼働を始めた近隣の上名倉工場との連携もこれから積極化していく計画だ。

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