脳内へ高効率で薬剤 川崎のナノ医療イノベーションセンターなどがカプセル開発

 ナノ医療イノベーションセンター(川崎市川崎区殿町)の片岡一則センター長(東大政策ビジョン研究センター特任教授)と安楽泰孝客員研究員(東大大学院特任助教)らの研究グループは19日、脳内へ高効率で薬剤を届けるウイルスサイズのナノマシン(薬剤カプセル)の開発に成功した、と発表した。アルツハイマー病などの治療薬開発を大幅に推進すると期待されている。

 脳には、血液から入る物質を制限するバリアー(血液脳関門)があり、薬剤の通過を妨げるため、アルツハイマー病などの治療薬開発の障害となっていた。

 研究グループは、脳のエネルギー源であり、バリアーを通過できるブドウ糖に着目。これを表面に搭載したナノマシンを開発し、マウスを使って実験した。空腹時にブドウ糖を吸収しようとする脳の生理的な反応を利用し、従来の120倍以上という高効率で脳内に薬剤を集積させることに成功。神経細胞にも取り込まれることが明らかになったという。

 メンバーの横田隆徳東京医科歯科大教授は「創薬の永遠のテーマとされ、困難だった高分子薬剤の脳への送達を初めて可能にした画期的な基盤技術」と話し、難治性脳神経系疾患の治療薬開発に弾みをつけると期待している。

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