金属行人(10月20日付)

 北陸新幹線の白山総合車両所と南極観測基地の車両倉庫―単純に場所も役割も異なる二つの建築物を並べて眺めても、実際のところ一見してその共通項が何かを当てるのは容易ではないだろう▼鉄骨造で、構成する部材の表面に溶融亜鉛めっき加工しているという点が前述の二つの建築物を結び付ける解だ。日本溶融亜鉛鍍金協会と日本鉱業協会鉛亜鉛需要開発センターが今月東京都内で開催した技術講演会で取り上げられた▼ともになかなか足を運べないという人も少なくないかもしれないが、実際のところ、駅や道路、公園、オフィス、駐車場をはじめ日常生活のあらゆるシーンで、鋼とともに市民の安全や安心を支えている資材の一つが溶融亜鉛めっきだ▼原材料の亜鉛は記録的な高値で推移している。安定供給に向けて溶融亜鉛めっきの加工会社は自助努力でコスト負担の軽減に臨むものの、すべてを賄うのは難しい。社会的使命を負いつつ、各社厳しい舵取りが続く▼溶融亜鉛めっきに限らず、あらゆる商材に適正な価格水準があるに違いない。売り手、買い手の双方に事情はあるにせよ、正しい理解とそれに基づく対応はあってしかるべき。健全な市場形成に向けた動きが待たれる。

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