ソフトB打線、楽天岸を“攻略”できたワケ 5回92球での降板を呼んだ粘り

ソフトバンク・内川聖一【写真:藤浦一都】

2連敗からの2連勝で一気に王手、則本に続いて岸の先発試合でも勝利

 リーグ王者のソフトバンクが日本シリーズに王手をかけた。21日に本拠地ヤフオクドームで行われた楽天とのクライマックスシリーズ・ファイナルステージ第4戦。抜きつ抜かれつの大接戦となったが、1点ビハインドの6回に内川の4戦連発となる同点ソロ、中村晃の2戦連発&2者連続の勝ち越しソロが出て一気に逆転し、勝負あり。アドバンテージを含めて3勝2敗とし、ファイナルステージ突破へあと1勝となった。

 白熱の接戦となった第4戦。勝負を分けたポイントの1つは、継投だった。楽天は岸孝之投手が先発したが、2回、3回に1失点ずつ。状態はそれほど良いようには見えず、粘りのピッチングを続けていた。味方打線が4、5回に逆転に成功。1点をリードした状況で5回を終えた。

 6回までは岸が続投するだろうと思った方も多いはず。ただ、梨田昌孝監督は、ここでの岸の降板を決断。このタイミングでの継投が、結果的に裏目に出るのだが、楽天ベンチにこの継投を選択させざる得ない状況にしたのは、ソフトバンクの打者陣、特に下位打線だった。ソフトバンクの藤本博史打撃コーチは、この日の打線についてこう語った。

「粘り強くいった感じがあった。最初は積極的にいって、追い込まれたら粘り強く出来たから、甘い球が来る。追い込まれてから、3ボール2ストライクまで持ってくるとか、そういうことが出来ているから、そういう形になった。岸は、そう簡単に打てる投手じゃない。積極的にいって、追い込まれたら1球でも多く投げさせることが出来たらいい。高谷はボール、ボールを見逃して、ストライクをファールにして。下位打線がそういうことをしたら球数を投げさせられる。積極的にいってくれと言っているわけだから、初球を打って凡打になるのはしょうがないが、追い込まれて、下位打線がああいう形をとれたら最高」

 初回はわずか9球で3者凡退となったソフトバンク打線だが、1点を先制した2回は岸に33球を投げさせた。この回は右飛に倒れた松田は7球目、左翼線への先制の適時二塁打の長谷川勇が6球目、右前安打で繋いだ明石が7球目、空振り三振となった高谷ですらもファールで粘って9球目を打った。6番から9番まで4者連続でフルカウントまでもっていった。

直球を1球で仕留めた内川は「立派」

 追い込まれても、粘って粘って球数を投げさせる。攻撃の鉄則ではあるが、それを球界を代表する投手相手に遂行するのは簡単なことではない。9番に入っていた高谷は5回の第2打席でもフルカウントまで持ち込み、7球目で四球を選んだ。この回で岸の球数は92球に達した。

 楽天の梨田昌孝監督は「岸もちょっとあっぷあっぷの状態だった。球数とかよりも、ボールも先行して、しんどそうなところだったので、スパッと代えた」と説明。岸の投球内容と、中5日という状況もあっただろう。5回で降板させたが、仮に80球台だったならば、6回もマウンドに上がっていたはずだ。

「5回で岸が降板したのも大きい」とも藤本コーチは言う。楽天はファーストステージから戦ってきており、中継ぎ陣の登板がかさんで来ていた。ファーストステージから5連投となった福山も第3戦で敗戦投手に。早い回で岸を引きずり下ろせば、それはソフトバンクにとっては追い風となるのは明白だった。

 そして、6回だ。岸からバトンを受けた宋家豪(ソン・チャーホウ)。2日前の第2戦では内川、松田を全球真っ直ぐ勝負で空振り三振に切っていた台湾人右腕だが、2度続けてやられるほど、リーグ王者の打線はやさしくはなかった。

「宋は球種が少ない。真っ直ぐとスライダー、ほぼ2種類しかないわけだから。どっちかに絞っていけと。内川がよく真っ直ぐを打ってくれたよね」と同コーチ。内川は2球続けたスライダーを見逃し、1ボール1ストライクからの3球目、この日最初の真っ直ぐを一発で仕留めた。続く中村晃は、内川の同点弾の興奮が冷めやらぬ中、初球の、こちらもストレートを右翼席に運んだ。勝ち越しのソロだった。

「内川にはスライダースライダーで入ってきた中で、ストレートを一発で仕留めてくれたのは大きい。いきなり真っ直ぐに対応出来ているのは凄い。いきなり対応するのは打者としてもなかなか難しいと思う。立派ですよ」

 150キロを越す宋の真っ直ぐを一振りで仕留めた内川はさすがの一言。藤本打撃コーチも脱帽だった。

 これで日本シリーズ進出に王手をかけたリーグ王者ソフトバンク。1、2戦目と元気がなかった打線だったが、相手にプレッシャーをかけられる、粘っこい本来の姿が戻ってきた。あと1勝。一気に決めそうな気配すら漂ってきた。

(Full-Count編集部)

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