中国税関、密輸に加担した北朝鮮ドライバーを「永久入国禁止」

中国遼寧省の丹東は、中朝貿易の要衝である。丹東税関は今年春から、北朝鮮との間で輸入・輸出される品物に対して、厳しい検査を行ってきた。

国連安全保障理事会の制裁決議に基づき、中国の銀行から北朝鮮への送金ができなくなってからは、両国を行き来する北朝鮮のトラックドライバーが運転席の下に現金を隠して北朝鮮に持ち込むなど、制裁破りを繰り返し、丹東税関との間でイタチごっこが繰り広げられてきた。

それに業を煮やした税関は、強行措置を取り始めた。中国への永久入国禁止だ。

中国の国境沿いの貿易業者が、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)に語ったところによると、丹東税関は、通関手続きを経ず違法に物品を持ち込もうとしたドライバーに対して、中国への永久入国禁止を言い渡している。1回でも違反すればアウトだ。

以前ならドライバーの責任は問わず、品物の没収で済ませていた。また、ドライバーに罰金を科す場合もあったが、支払い能力がないため、全く意味のない措置だった。

北朝鮮でドライバーになるためには、多額の投資を要する。

まずは運転免許の取得が必要になるが、それ自体が至難の業だ。自動車養成所(自動車学校)があるにはあるが、半年間みっちり通って、整備士同様の教育を受けなければならない。軍の運転兵になる方法もあるが、志願してなれる可能性は著しく低い。

多くの人は、250ドル(約2万8000円)ものワイロを払って免許証を不正に取得しているのが現状だ。

免許取得後、幹部に多額のワイロを掴ませてようやく中朝貿易のトラックドライバーになれる。単に北朝鮮と中国を行き来するだけではなく、様々な密輸に加担してようやく儲けが出る。

以前なら中国に行けなくなっても、北朝鮮国内でソビ車(個人運送業)の営業を行えば、かなり儲けられた。しかし、今ではそれもままならない。

北朝鮮当局はナンバープレートの更新作業を行い、非正規の手段で登録した車両を締め出してしまった。

そこに経済制裁によるガソリン価格の高騰も加わり、運送業を営むには最悪の状況となってしまったのだ。

中国から「永久出禁」を食らったドライバーに残された道は、一般労働者として工場、企業所に籍を置き、市場でコツコツと商売するしかなくなったと言える。もらえる月給は小遣い銭程度だ。

北朝鮮より遥かに豊かで自由な中国に慣れ親しんだドライバーにとって、北朝鮮に閉じ込められるのはつらいことだろう。闇に紛れて国境の川を渡り、中国へ逃れる人も現れるかもしれない。

ちなみに丹東の情報筋によると、新義州(シニジュ)にある3つの運送会社の中で、もっとも違法行為が多いのは朝鮮人民軍(北朝鮮軍)系列の会社とのことだ。

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