スカウトの腕の見せどころ!? 今季活躍した“掘り出し物”ルーキーたち

楽天・高梨雄平(左)と森原康平(右)【写真:荒川祐史】

新人王候補の源田&京田は遊撃のレギュラー定着、チームに欠かせない選手に

 現在、クライマックスシリーズ(CS)・ファイナルステージが行われ、連日、熱い試合が繰り広げられているプロ野球。クライマックスシリーズが終わると、日本シリーズ前の10月26日には、2017年のNPBドラフト会議が行われる。今年は、高校生、大学生に提出が義務付けられている「プロ志望届」を210人(高校生106人、大学生104人)が提出した。

 昨季も様々な選手が指名を受け、プロの世界へと飛び込んでいった。ここでは、脚光を浴びたドラフト1位選手ではなく、ドラフトでスカウトたちの腕の見せどころとなる2位以下で指名された選手の中で1年目、期待以上の活躍を見せた“大当たり”の掘り出し物ルーキーをピックアップしてみたい。

 まずは新人王の最有力候補となっている2選手を上げなければ、話が始まらないだろう。

○西武3位 源田壮亮(トヨタ自動車)
143試合 打率.270 3本塁打 57打点 37盗塁

 文句なしのパ・リーグ新人王の最有力候補だろう。ドラフト3位ルーキーにして、球団では36年ぶりとなる新人の開幕スタメンを掴んで遊撃手の定位置に抜擢されると、1年目で143試合フルイニング出場。開幕当初は9番だったが、すぐに2番に定着した。

 球団の新人安打記録、新人盗塁記録などを塗り替え、シーズン155安打は1958年の長嶋茂雄氏を越え、史上3位の新人安打数となった。可能性のあった盗塁王のタイトルは逃したが、守備での貢献度も高く、西武2位の立役者に。新人王の可能性は限りなく100%に近いだろう。

○中日2位・京田陽太(日本大学)
141試合 打率.264 4本塁打 36打点 23盗塁

 こちらはセ・リーグの新人王最有力の1人。ドラフトの前から各球団からの評価は高く、巨人にドラフト1位指名された吉川尚(中京学院大学)とともに、即戦力野手としてドラフト1位候補に挙げられていたため“掘り出し物”とは違うかもしれないが、それでも期待以上の働きだったのでは。怪我で出遅れた吉川尚とは対照的に、こちらは遊撃手として開幕スタメンに名を連ね、交流戦中から不動のリードオフマンとなった。

 こちらはシーズン149安打と、源田には及ばなかったものの、立浪和義氏を抜き、球団の新人安打記録を更新。2桁10勝をマークしたDeNAのドラフト1位・濱口(神奈川大)と新人王の座を争うと見られている。

 ただ、この2人はドラフト上位指名で、もともと評価の高い選手ではあった。それ以上に、他球団が指名しなかったものの、眼力を信じて下位で指名した選手の活躍は、各スカウトが最も胸を張れるもの。3位以下の下位指名にもかかわらず、活躍したのは、以下の選手たちだろう。

ドラ9高梨&ドラ5森原はブルペンから楽天の躍進支える

○楽天9位 高梨雄平(JX-ENEOS)
46登板 1勝0敗14ホールド 防御率1.03

 2016年の支配下ドラフトで最大の“掘り出し物”だったのが、この左腕ではないだろうか。楽天の9位指名。このドラフトでは支配下で全87人が指名を受けたが、高梨の名前が読み上げられたのは、なんと85人目だった。だが、左のサイドスローという特長のあるフォームで、開幕1軍の座を掴むと、左キラーの地位を確立。5月はじめに一度、ファームに降格したものの、6月に再昇格を果たし、46試合を投げるルーキーイヤーとなった。

 大事な場面での登板を任され、対左打者には被打率.133という素晴らしい成績で、夏場まで首位に立っていた楽天に不可欠なリリーフとなった。リーグ3位ながらファイナルステージ進出を果たしたクライマックスシリーズでも左キラーとして好投している。

○楽天5位 森原康平(新日鉄住金広畑)
42登板 2勝4敗13ホールド 防御率4.81

 高梨とともに、ルーキーながら、中継ぎ陣の一角で楽天の快進撃を支えた。開幕1軍に名を連ねると、プロ初登板から10試合連続無失点をマーク。勝利の方程式に組み込まれ、守護神・松井裕に繋ぐセットアッパーとして重宝された。ただ、5月末までに26試合に登板と、登板過多は明らかで、徐々に失速。6月10日に出場選手登録を抹消された。

 約1か月半のファームでの再調整期間を経て、8月に再昇格を果たしたが、9月14日に再びファーム落ちとなった。それでも、前半戦の働きは特筆すべきもので、中盤まで首位に立っていた楽天を支えた1人だったのは間違いない。

○西武5位・平井克典(Honda鈴鹿)
42登板 2勝0敗4ホールド 防御率2.40

 源田を3位で指名していた西武からもう1人。ドラフト5位指名だった平井も、いい働きを見せたルーキーだった。右のサイドハンドの25歳。開幕1軍こそ逃したものの、5月23日に初めて1軍に昇格すると、クライマックスシリーズで敗退するまで1軍に居続けた。主にビハインドの展開や、先発が早い回で降板した場合での登板が多かったものの、42試合に登板。防御率2.40と上々の成績を残した。登板する場面もあって、目立つ存在ではなかったものの、西武にとっては大事な役割を果たした投手の1人であった。

○オリックス5位 小林慶祐(日本生命)
35登板 2勝1敗1ホールド 防御率3.98

 シーズン中盤から1軍に加わり、主にビハインドの展開での登板が主だったものの、35試合に登板した。9月18日の日本ハム戦(札幌D)では4回2/3のロングリリーフもこなした。9月30日のソフトバンク戦(京セラD)で、2番手として登板し、6回に打球が頭部を直撃。救急搬送するアクシデントに見舞われた。脳や骨への異常はなく、右瞼の上部の打撲と裂傷で8針を縫合。10月1日に静養のために出場選手登録を抹消されており、来季以降の活躍が期待される。

○ロッテ5位 有吉優樹(九州三菱自動車)
53登板 2勝5敗16ホールド1セーブ 防御率2.87

 地元千葉の東金高校から東京情報大学、九州三菱自動車を経て、ロッテに加わった右腕。5位指名ながら即戦力として期待され、キャンプから1軍入りを果たすと、開幕1軍の切符も掴んだ。低迷するチームにあって、大谷や内、松永とともに勝ちパターンの一角を任されることもあり、チーム3位の16ホールドをマークした。ルーキーながら1年間1軍でプレーし、53登板は大谷の55登板に次ぐ2位。来季以降もチームの中心として期待される右腕である。

○阪神5位 糸原健斗(JX-ENEOS)
66試合 打率.259 1本塁打 24打点 1盗塁

 春のキャンプで1軍に抜擢されると、開幕1軍入りも掴んだ。主に内野の控えとして途中出場が多かったものの、4月13日のDeNA戦(横浜)でプロ初スタメン。北條の不振もあって徐々にスタメンの機会を増やしたが、7月19日の広島戦(マツダ)で右膝を負傷。右膝内側側副靭帯の損傷で長期離脱となったが、DeNAとのクライマックスシリーズ・ファーストステージで復帰し、メンバー入りを果たした。

 このように見渡してみると、下位指名にもかかわらず、1年目から活躍している選手は、やはり社会人出身者が多い。2017年のドラフトからも、各球団で指名された社会人選手の1年目には注目だろう。

 ただ、ドラフトの真の成果は、1年目だけでなく、5年、10年経ってから分かるもの。広島の4位・坂倉将吾捕手(日大三高校)、オリックスの4位・山本由伸投手(都城高校)、DeNAの5位・細川成也外野手(明秀日立高校)、ソフトバンクの2位・古谷優人投手(江陵高校)、中日の3位・石垣雅海内野手(酒田南高校)、ヤクルトの3位・梅野雄吾投手(九産大九州高校)といった高卒ルーキーや、中日の4位・笠原祥太郎投手(新潟医療福祉大学)、巨人のドラフト2位・畠世周投手(近畿大学)、日本ハムの4位・森山恵佑外野手(専修大学)など将来性が見込まれている選手も数多くいる。5年後、10年後、どれだけの選手がチームの中核を担っているか。若者たちの未来が楽しみだ。

(Full-Count編集部)

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