【品種別戦略】〈JFEスチール・ステンレスセクター長・林周一郎常務〉原料価格の変動、販価に早期反映 独自鋼種の品ぞろえ拡充

――国内需給は非常にタイトだが、操業状況は。

 「千葉も西宮もフル稼働が続いている。国内のステンレス見掛消費量は、リーマン後150万~160万トンで安定して推移。クロム系薄板の需要は昨秋から厨房・自動車分野および店売りで盛り上がり、今上期も建材分野を含め昨年を上回る堅調さが継続している。下期は、自動車分野の上下段差が加わりさらにタイト化する。従い、安定稼働継続がメーカーの使命だ。2015、16年は操業に不安定な部分があったが、数年来の重点補修・ネック工程解消活動により、現在操業は安定している」

――原料価格の激しい変動への対応はどうだったのか。

JFEスチールステンレスセクター長・林常務

 「原料炭・フェロクロムの高騰は、1月に公表した通り、昨春から累計6万円の値上げに匹敵するインパクトがあった。今春までにおおむねお客様のご理解はいただけたが、昨年度中は販価改訂がコストアップの後追いになり、遺憾ながら収益面では厳しい一年だった」

――今後の対策は。

 「ステンレスの販価は、需給や市況・為替の要素を基本に、交渉で決まる部分がほとんどだが、昨今の購入原料の大幅変動は無視できない。原料炭は、4~6月からスポット価格基準のインデックス方式に切り替わったため、四半期ないし月ごとに販価に迅速に反映すべく協議を進めている。クロムコストは、ヒモ付きではフォーミュラ適用の契約が多いが、反映時期が半年以上ずれるケースがあり、期間短縮の協議も始める」

 「補修費・劣化更新投資や商品開発・研究開発などの原資が必要。原料コストの変動対応だけでなく、ステンレス商品本来の付加価値に見合う価格体系の実現に向けて丁寧に説明し、時間がかかっても完遂させたい」

――EV需要の拡大など中長期の対応は。

 「ご指摘の通りだ。EV、PHVや燃料電池車などの環境対応車分野では、激しい開発競争が既に始まっている。自動車メーカーや部品会社と新たな共同開発も複数始まった。他方、現在の販売量の過半は自動車排気系部材。燃費規制強化により、得意とする耐熱ステンレスへのニーズはますます高まっている。当面量的拡大を見込んでおり、次期中期でも引き続き販売の主戦場となる。例えばJFE―TF1の販売は今後3年で6割増とみている」

――汎用品・既存商品をどう考えるのか。

 「汎用品のコスト競争力は必須だ。加えて特長も大切。例えば当社の汎用430は、表面の美麗さや光沢性で高い評価を受けており、塗装性に優れた表面仕上げの品ぞろえもあり、幅広くご利用いただいている。今後も、操業技術やノウハウを生かし、汎用品の付加価値を高め、JFEの特長を打ち出してゆく」

 「一言付け加えるが、多大な労力と時間をかけて開発した商品群の良さ・特性を最終ユーザーまで、きちっと伝えきれているか?という思いもある。例えばJFE443CTは良好な耐候性が認められ、戸建用宅配ボックスに新規採用された。クロム系ステンレスは、耐食性、耐熱疲労特性、耐応力腐食割れ性、耐孔食性に優れ、低い熱膨張、有磁性などさまざまな特徴も持つ。それらをお客様に伝えることで、従来想定していなかった用途でも、まだまだ拡販できると考えている」

――開発強化は。

 「05年に発売したニッケル・モリブデンフリーの443CTを一本足打法から発展させ、『443ファミリー』としてシリーズ化する。耐食性が304と同等以上の443CT、316と同等以上の高耐食JFE445M2に加え、新鋼種の投入を近々行う。シリーズ化により、お客様の要望にきめ細かくお応えしたい」

――新日鉄住金による日新製鋼の子会社化で、クロム系薄板メーカーは実質2グループに集約された。

 「お客様からは、BCPの観点で『JFEも頑張れよ』という声をたくさんいただいている。ご期待にしっかり応えなければならない」

――サプライチェーンに対して。

 「ステンレスは、商社・特約店・加工センター・物流・小口配送まで担う方々によって支えられ、多種多方面で使用いただいている。昨年はデリバリーでご苦労をお掛けしたし、原料高騰へのご理解と共働対応など、さまざまな局面で支えられていることを実感した。改めて感謝申し上げたい」(谷山 恵三)

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