【インドネシアに進出する日系鋼管関連企業、ジャカルタ近郊の工業団地から(5)】〈フソウ・チューブパーツ・インドネシア(FTPI)〉継目無鋼管販売・加工、建機向け需要捕捉 「高精度部材」現調化ニーズに対応

 機械構造用鋼管の卸売りや各種加工を手掛ける扶桑鋼管(本社・千葉県浦安市、社長・江村伸一氏)のインドネシア現地法人「フソウ・チューブパーツ・インドネシア(Fusoh Tube Parts Indonesia、FTPI)」は、現地に進出する日系の建産機や農機具向け部材などの需要を捕捉するため、2012年4月に設立。14年4月から操業を開始した。同社にとっては、タイの事業会社「フソウ・チューブパーツ・タイランド(FTPT)」に続く2カ所目の海外拠点。

 ジャカルタの東約30キロメートルのジャバベカ(Jababeka)工業団地内に敷地面積約1万平方メートルの工場拠点を構え、継目無(シームレス)鋼管を主体とした機械構造用鋼管の在庫、切断、切削加工を手掛ける。

 向け先の約7割が現地に進出する日系建機メーカー向け。NC旋盤で、ボス、フランジ、操舵軸、シャフトピン、リングストッパーなどの部材加工を行う。その他、重機、特殊車両、二輪・四輪関連、土木・インフラ関係部材なども扱う。

 在庫販売する鋼管は日本からの輸入材がメーン。STKM13AやS45C、SUJ―2などを常時在庫。用途やコストニーズに応じるため、中国製継目無鋼管などを直接輸入して販売もできる。継目無鋼管の在庫販売を行うのは、近隣ではFTPIだけ。鋼管以外には、丸棒や平鋼の取り扱いもある。用途に最も適した材料を輸入して在庫販売する同社は、供給先にとってはコスト面でのメリットが大きい。

 加工設備は現在、切断機で帯鋸(バンドソー)4台と丸鋸1台、NC旋盤機2台、汎用旋盤機1台、フライス盤1台、薄肉鋼管用切断機2台。加工設備のほとんどは、扶桑鋼管の大阪営業所(大阪府大阪市大正区)や北陸加工センター(石川県小松市)から移設している。加工能力増強のため、近々大阪からNC旋盤を1台移設。さらに丸鋸とNC旋盤をそれぞれ1台ずつ日本から移設する予定だ。

 現在設置しているNC旋盤機はミーリング機能がついており、チャック18インチ、最大径460ミリサイズの加工に対応。比較的大型サイズの加工に対応できるため、差別化に寄与している。

 薄肉鋼管用切断機は北陸加工センターから移設。自動車の給油管向け部材の切断加工などをメーンに行っており、鋼管の口径によって2台を使い分けている。

 設立した直後から現地の建機需要が落ち込んだため、FTPIはしばらく厳しい商状が続いたが、今年の7月くらいから徐々に需要が回復。すでにキャッシュアウトは止まっており、8月には初めて単月で黒字を達成。来期(19年3月期)は通期での黒字を見込む。

 従業員も少しずつ増えており、現在は邦人駐在員を含む19人体制。そのうち3人は、扶桑鋼管の北陸加工センターに勤務経験のある実習生を採用している。

 扶桑鋼管はインドネシアに拠点を構える前から、北陸加工センターでインドネシアからの実習生を積極的に採用してきた。実習生は3年間で帰国しなければならないが、扶桑鋼管では帰国後に実習生の一部をFTPIで雇用。同時に、北陸加工センターで実習生が実際に操作していた設備のうち償却が終了したものから順次移設。扶桑鋼管にとっては現地での優秀な人材の確保、実習生にとっては使い慣れた設備を使って自国で仕事ができるメリットがある。

 特に優秀だった実習生1人は再度就労ビザを取得してもらい、現在日本で品質管理を学んでいる。将来の現地での品管マネージャーに育てたい意向だ。「日本で当社の技術・加工ノウハウを学んで現地拠点で働いてもらうのが第一歩。最終目標は、現地生産をナショナルスタッフだけで行うこと」(江村社長)。

 現在現地の日系建機メーカーは、超高精度が要求される部材については依然として日本から輸入しているものも多い。ただ、いずれそうした部材の現調化ニーズ増加も見込まれる。FTPIは将来的に、材料調達から設計・加工まで独自のトータルコーディネート営業で精密部品加工販売業を行う同社の「北陸加工センターのスタイル」を現地で目指していく。

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