【工場ルポ】〈鉄筋加工機のパイオニア、東陽建設工機福岡工場〉部品加工の生産性2倍強へ(15年度比) 24時間稼働の横型マシニング導入

 世界初の試みとなる鉄筋業界の展示会「鉄筋EXPO2017」が11月24日から26日まで千葉の幕張メッセ国際展示場で開催されるが、運営の主導的な役割を担っている企業の一つが東陽建設工機(本社・大阪市、社長・秦興司氏)である。『世界一の鉄筋加工機メーカーになる』を経営目標に掲げて、部品加工分野を強化。鉄筋加工機(鉄筋切断機、鉄筋曲機、メッシュ加工機、鉄筋加工ラインシステム)のパイオニアであり続けるために、約2年前から生産性向上に力を注いでいる。福岡工場にスポットを当てて、同社の取り組みを紹介する。(馬場 雅明)

 福岡工場の操業開始は1960年6月。会社設立の翌年の立ち上げで、まさにマザー工場である。生産工場(東京、日野<滋賀>、鳥飼<大阪>、福岡)の中では最も歴史があり、「新商品の開発では、常に先駆的な役割を果たしてきた」(石橋秀和福岡工場長)という。

 ただ4つの生産工場の中では最も狭い。敷地面積は2334平方メートルで、工場棟の広さは1712平方メートル。ちなみに1985年に操業を開始した日野工場の敷地面積は8万4524平方メートルを誇る。生い立ちからして、汎用機の曲機、自動曲げ装置主体の少量多品種の生産拠点である。

 前6月期の生産実績は1877台で、そのうち福岡工場は462台を占めている。内訳は、汎用機が219台で、自動機(画面上で寸法や角度を打って自動制御)が243台。当初は汎用機主体の生産シフトだったが、2007年に鉄筋自動曲装置「TRB―10―5」の生産を開始してからは自動機のウエートが急速に高まり、汎用機の比率が低下している。

 今年は3カ年中期経営計画の最終年度。与えられているミッションは、4工場全体で1・6倍の生産体制作りで、福岡工場は部品加工分野の生産性を2年前の2・23倍に引き上げること。工場の生産体制見直しに伴い、日野工場が全体の約60%を手掛けていた部品加工分野から撤退し、大型の自動機生産に特化。その分を福岡工場と鳥飼工場に振り分けられることになったのが背景にある。

 そのための投資として、9月末にマシニング部門の加工機を入れ替えた。5台を4台に減らしたが、24時間稼働可能な横型マシニング「HM―630」(OKK製)を導入したことで、稼働率の大幅向上が見込まれる。21パレットチェンジャー付きは九州地区で初採用。約1年かけて24時間稼働体制に持っていく方針だ。

 旋盤部門では、6月末にNC旋盤「LT―2000」(オークマ製)を導入したほか、2015年に複合旋盤「MULTUS B―300II」(同)を既に設置している。4台ある加工機のうち2台を新型機種に入れ替えたが、新設した加工機はローダ付とあって全体の稼働率は向上が見込まれている。

 4代目の工場長である石橋工場長は「鉄筋加工機メーカーにおける最大のテーマは、少量多品種に対応した省力化と効率化。限られた敷地内で、いかに生産性を引き上げていくかが課題」とし、「新設備の稼働を軌道に乗せた後は、作業者の負担が大きい塗装工程の改善として塗装ロボットの導入を検討したい。働き方改革が叫ばれているだけに、生産性を向上させることで業界発展に貢献。そして経営目標を実現したい」と話している。

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