「まるで核保有国の決議」

 核兵器禁止条約に言及せず、核兵器の非人道性を巡る表現が後退した日本政府主導の核兵器廃絶決議が国連総会の委員会で採択された。昨年よりも賛成国が大きく減り、採決を棄権した国が増えており、被爆地の長崎では28日、「まるで核保有国の決議」「被爆国への信用を失った」と落胆する声が上がった。

 田上富久市長はコメントを出し「決議文の内容の後退があり、まるで核保有国が出した決議かのような印象を持つ」と指摘。これまでの決議では「核兵器のあらゆる使用」が壊滅的な人道上の結末をもたらすと明記してきたが、今年は「あらゆる」が削除されたため、「核兵器はいかなる状況でも使用してはならないという被爆国の基本姿勢に疑念を生じさせる」と問題視した。

 6月に国連で核兵器禁止条約の制定交渉会議を傍聴した被爆者の川副忠子さん(73)は「条約を求める多くの非保有国が被爆国の役割に期待しているのに、日本政府は裏切り続けている。被爆国への信用を失った」とあきれた様子。県被爆者手帳友愛会の中島正徳会長(87)は「日本政府は本気で核廃絶を目指していない。多くの国はそれを見透かしている」と反発した。

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