歯周病が進行した状態であればあるほど、歯石を取った後の歯肉が大きく変化することがあります。でもそれが原因で誤解を生んでいることがあります。
たとえば、歯の根の奥まで歯石を取られすぎて、しばらくしたら「歯肉が痩せて、歯の根元がどんどん見えるようになった。」という話です。
歯石自体は歯周病の原因ではない? それでも除去すべき理由
「それは、歯石が歯周病の原因になっているからだよ。」
でも正確には、固くなった石のような部分は、歯周病の原因ではありません。歯垢が石灰化して固まっているため、何の病気も引き起こしません。
「エーッ、じゃあ何で歯石を取るの?」
実は歯石の表面を顕微鏡で見ると、歯の表面に比べて、とても凸凹しています。歯石の表面には歯垢がよりつきやすいのです。凸凹歯石には、細菌も集まりやすく、歯周病を進行させます。そのため歯石を取って細菌が集まってこないようにするのです。
実は病院などで歯石を取るときには、固まった石のような部分だけでなく、その周りの固まっていない歯垢などの汚れも一緒に取って、ツルツルにしています。
歯石を取ったら歯茎が下がってスカスカになることはある?
実はこれは勘違いです。但し進行している歯周病ほど歯石を取った後に歯肉が変化しやすくなります
歯石を取る前
1:歯石が歯肉の中に隠れている
歯周病が進行すると歯肉の中の根の部分にまで歯石が隠れています
2:歯の周りの骨は溶けて下がっている
歯周病が進行すると歯を支える骨が溶けてしまいます
3:同時に歯肉は炎症を起こし腫れて盛り上がっている
実は腫れているだけなのに、歯肉がたくさんあるように見える
歯石を取った後
1:歯石がなくなる
歯肉の炎症がなくなります
2:歯の周りの骨は溶けて下がったまま
歯周病で一度溶けてしまった骨は、基本的には元の形に戻りません
3:炎症がなくなり歯肉が引き締まってくる
溶けた骨の形に沿って歯肉が引き締まる健康な状態となります
つまり歯石を取ったから歯肉が下がったのではなく、取る前に腫れていた歯肉が健康な状態に戻っただけなのです。こういった勘違いは、歯石を取ったことがほとんどなく、自分では歯肉は健康と信じていて、実は歯周病が進行している人に起こりやすくなります。
それでも、歯肉が下がったのは、治療時の器具の操作が原因じゃないかと考えてしまいがちですね。
定期的な歯石除去の安全性
もし健康な歯の周囲の歯肉に、歯石取りの器具を強く押し込むと、どうなると思いますか?
健康な歯肉の場合、歯肉の奥にある歯の周囲の骨は溶けていません。したがって、歯石より奥まで押し込んだとしても、僅か2~3mmで骨に器具がぶつかるだけです。
実は器具はかなり強く押し込んだとしても、根の奥まで押し込めません。そして歯肉が大きく下がる程のダメージも与えることはできません。
歯石取りを定期的に繰り返していても、それが原因で歯肉が下がることは、ほとんどありませんので、心配しなくて大丈夫です。