金属行人(10月30日付)

 特殊鋼棒鋼・線材の国内需給が極めてタイト化している。背景の一つが中国の日系自動車生産の活発さであり、さらに現地系を含めて中国自動車産業で品質重視の傾向が強まっていることが日本の特殊鋼メーカーの繁忙さの一因となっている▼中国の日系自動車生産は2016年4~6月期以降、四半期ベースで90万台を超え、同10~12月期から100万台を超える高水準となった。この動きに呼応して、日本からの自動車部品輸出は同10~12月期に急増。その後も高水準で推移している▼中国の車用特殊鋼需給もタイト化している。品質重視の流れの中で実力のある一部の部品メーカーや特殊鋼メーカーに注文が集中。中国大手の東北特殊鋼の経営破綻や地条鋼取り締まりによる鋼片供給の減少も影響し、中国の特殊鋼メーカーはフル稼働状況にある。この結果、日本の部品メーカーや特殊鋼棒鋼メーカーへの引き合いが増加し、日本の特殊鋼メーカーが対応に苦慮する一因となっている▼日本の特殊鋼棒線需給のひっ迫感は、まずは内需の旺盛さによるものだが、複合要因が重なっており、中国の影響もその一つ。見方を変えれば、品質競争力の高さ故の忙しさであり、「日本品質」を再認識させられる。

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