「プロポーズされない女」に足りないもの

長く付き合ってるし、仲もいい。なのになぜ? 彼はいつまでもプロポーズしてくれないの……。

最近の男性は、告白どころか、まったくプロポーズしないという。プロポーズされなくて困っている女子は、昔からいたけれど、最近ますます増えているよう。

周囲にもいる。知人の35歳の同い年カップルは、付き合って3年目。傍目にはとても順調そうで、一般的には、そろそろ結婚のタイミングなのだけれど、なかなかその時が訪れない。と思っていたら、どうやら、男にその気が希薄そうなのだ。

結婚の押しがなくとも、出産の押し

ある時、そのカップルの男性のほう、Aくんの話を聞く機会があった。きっかけは、酒宴にて、彼がこぼしはじめたグチともジョークともつかないエピソード。

みんなが「なぜ、結婚しないのか?」と聞いたところ、最初は、何だかしどろもどろして適当にゴマかしていたのだけれど……「彼女からの押しはあからさまなんだけどねぇ」とつぶやきだした。押しとは「結婚についての押し」ではなくて、「出産の押し」なのだという。

彼女は「結婚したい」とは決して言わないものの、「子供を早く生みたい」が最近の口癖なのだという。それだけではない。自らの排卵日を調べて、彼に告げる。その日は、「早く帰ってこい」としつこく言うのだと言う。

ある時は、彼が深夜帰宅すると、机の上に『35歳の出産』という本が置いてあり、「これを読んでおいて」というメッセージが添えられていたこともあったという。本の帯には、「高齢出産の厳しい現実と対策」という文字。

その話を聞いた酒宴の男子たちは、彼女のあからさまな行動のエピソードに、みんな引きまくり。だけど、同じ女性としては、「引く」わけもなく……別な考えが頭を巡った。

35歳の彼女の気持ち

35歳の彼女は、出産に焦りが芽生えている。出産したいから、あんな大胆であからさまな行動をとっていることは確かだと思う。だけど、数々の恋愛を経験してきた彼女にとって、それが、男に引かれる行動であることは、百も承知だと思うのだ。

心から、早く出産したい彼女にとって、それくらいで引く男なら失っても仕方ない。「引くなら引け!」みたいな気持ちで、思うがままに行動しているのかもしれない。

もうひとつ、30女のプライドとして「結婚したい」というよりは、「出産したい」のほうが言いやすいというのもあるのかもしれない。

「いくつになっても女性の結婚したい病って収まらないんだね」と1人の男子がいうと、彼は大きく頷いて、ため息をついた。しかし、彼は、そんな彼女の行動に引いたから、プロポーズしないのではないらしい。

彼女の巧妙な手引きにより、すでに彼女の両親にも会ったし、自分の両親に会わせる機会もあった。「結局は、結婚しなくちゃいけないだろうなぁ」と消極的なことを言う。みんながリアクションに困った顔をしているのを見て、「いやいや、彼女のことも結婚も嫌ではないんだよ。でも思い切れないんだ」と彼。

思い切れない彼の理由

よくよく聞きこんでみれば、彼にはまだやりたいことがある。今の自分の仕事にも人生にも疑問を持っているし、もっと新しい挑戦もしてみたいし、落ちつける気持ちにならないのだという。つまり、彼女や家族を養うという腹が決まらないというのが、プロポーズできない最大の原因だ。

でも、この先も冒険心は消えないだろうし、永遠の安定なんてない。彼女との間に愛と信頼関係があるのなら、とりあえず結婚してしまえばいいのに……と私なりにアドバイスしてみたものの、右から左。男はどうしたって自分のタイミングで結婚したい生き物らしい。

では、せめて、彼女にそういう気持ちを話してみたら?「不安定になるかもしれないけど、それでもいいの?」って聞いて彼女からのOKがもらえたら、ずいぶんと気持ちもラクになるし、彼にとっても結婚にリアリティが増すはずだ。

だけど、彼は「そんなこと言えない」という。なぜならば、「結婚して会社を辞めたい」が最近の彼女の口癖で、たぶん、不安定な生活なんて望んでいない。彼の冒険を快く思わないことが明白だから(それはそれで、結婚したい女子としては正しい願望なのかもしれないけれど……)。

「出産」に見え隠れする女の自立心、女の計算

30代まで一生懸命働いてきた女性でも、男に頼りたいものなのか。女の自立心なんて、流動的で、揺れながら、少しずつ強くなっていく人もいれば、永遠に依存心が消えない人もいる。

彼は、彼女の中に、(出産したいをタテにしながら)依存したいという女の計算を感じ取っている。女の計算は、一概に悪いこととは言えない。けれど、その計算によって、自分の心の底にある本音をすべては話せていない(=弱みを見せられない)し、自分の深い部分をゆだねられないことが、実は彼女へのプロポーズを躊躇する最大の原因なのではないかと気づいた。

男に決断力がないといわれる時代。「プロポーズは女から」と腹をくくるくらいでちょうどいいと多くの人がいう。

以前、テレビでは、バツ3の芸人と結婚が決まった20代後半の女性が、自分から4度もプロポーズしたというエピソードを語っていた。「何度も失敗しているから結婚は……」と、躊躇する彼に向って、彼女は説得を続け、「私が幸せにしてあげるから」とピュアでストレートな気持ちを伝えた。その正直さと惚れこみ力に彼も動いた。

弱り迷っている男心を動かすのは、案外、シンプルなこと。小手先の計算よりも、腹をくくったピュアな愛情なのかもしれない。

(文:All About 編集部)

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