膵臓がん5カ月放置 横浜市大医療センター

 横浜市大付属市民総合医療センター(同市南区)は30日、コンピューター断層撮影(CT)検査の診断結果を院内で適切に共有せず、横須賀市在住の70代男性患者の膵臓(すいぞう)がんを約5カ月にわたって放置する医療事故が発生したと発表した。男性は16日に死亡した。

 同センターによると、男性は大腸に近い動脈瘤(りゅう)の治療のため2008年から定期的に通院し、ことし1月に検査のため胸腹部のCTを撮影。数日後に放射線科医がCT画像全体を確認したところ膵臓の一部が膨らんでいるのを発見し、「膵臓がんの疑い」とする画像診断書を作成、システムに入力した。

 だが、心臓血管外科医が画像診断書を確認せずに5月に動脈瘤を手術。男性は6月に腹痛を訴えて別の病院でCT検査を受けたところ膵臓がんの疑いが明らかになり、翌日に同センターを受診。既に肝臓や腹膜に転移するなど末期状態で手術は不可能だった。1月時点では切除も可能だったという。

 同センターは再発防止策として今月から、本来の検査目的と異なる部位で悪性腫瘍などが見つかった場合は、画像診断書を電話や紙で連絡することにした。また、年度内にシステム改修を行い、画像診断書未確認を示すアラート機能を追加する。外部委員を招いた事故調査委員会を早急に立ち上げ、年度内にも報告書をまとめるという。

 同センターの後藤隆久病院長は「診療情報の共有を確実に行うための制度が整備できていなかった病院全体の問題。患者と家族におわびする。市民の信頼を裏切り申し訳ない」と謝罪。家族には病院側から治療費などの補償を提案しているという。

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