【現場を歩く】〈東洋アルミニウム・八尾製造所〉国内最大のアルミ箔圧延・加工工場 年産2万4000トン、インラインで品質管理

 東洋アルミニウム(本社・大阪市、社長・山本博氏)は日本軽金属ホールディングス傘下のアルミニウム製品メーカーで、1999年設立(旧東洋アルミニウムの設立は31年)。事業の柱はアルミ箔、パウダー・ペースト、ソーラー、日用品の4本。欧・米・韓・中国・インドなどに事業を展開、アルミ箔・アルミペーストの世界シェアはともに世界トップクラスを誇る。国内の主要生産拠点は8カ所(八尾・蒲原・千葉・群馬・茅ヶ崎・湘南矢畑・新庄・日野)。八尾製造所は旧東洋アルミ設立当初からの製造拠点。超極薄圧延技術と厳格な品質管理体制を持ち、月間2千トン強を生産する国内最大規模のアルミ箔圧延・加工工場だ。八尾製造所を紹介する。(白木 毅俊)

 八尾製造所(大阪府八尾市相生町4―8―1)は、JR関西本線八尾駅の東南約1キロ、国道25号線沿いにある。近隣にはサンユウ八尾工場などもあるが、戸建て住宅やマンションが密集している。敷地面積は6万4278平方メートル、建築面積2万9541平方メートル。

 「八尾製造所は受注段階から資材調達・生産・加工・配送をコンピューター管理し、多品種少量生産、短納期を実現。圧延・分離・焼鈍およびスリッターの一貫生産体制を敷いている。従業員は協力会社の99人を含め計406人。太陽電池のバックシートを手掛けていたピーク時には約600人が従事していたが、現在では加工部門の生産移管などで減少している」(麻生敏執行役員箔事業本部素材箔ビジネスユニット長兼八尾製造所長)。

 管理システムは品質ISO9001を97年に、環境ISO14001を2001年に、情報ISO27001を07年に、安全衛生ОHSAS18001を09年にそれぞれ構築済みだ。

アルミ箔・加工品の製造工程

 八尾製造所の工場建屋は東から順に圧延工場(熱処理・圧延・分離)、圧延・物流工場(研磨・仕上げ)、圧延工場、加工工場の4棟が並ぶ。事務所棟は正門横の南側に、研究棟は敷地西側に位置する。

 アルミ箔製造の工程順に、麻生製造所長らの説明を受けながら圧延工場(6A棟)から見学した。主要製品であるプレーン箔の生産工程は、箔地立体倉庫―箔圧延機―分離機(重合箔セパレーター)―焼鈍炉―裁断機(スリッター)―検査・包装―梱包という流れ。

 インラインでの品質管理が大きな特長で、各工程ではCCDカメラなど各種検査装置を駆使しピンホールや表面の異物などを検出する。「6A棟はアルミ箔加工の出発地点。倉庫から搬入された箔地は圧延機にかけられるが、4台の圧延機は仕様がそれぞれ異なる。分離機(5台)、焼鈍炉(10台、全体では30台)を経てアルミプレーン箔が生産される」(同)。

 圧延機の内、重合圧延機は3台。重合圧延機は東洋アルミが国内で初めて箔の幅方向の歪みをなくし均一に圧延する形状制御を導入したもの。5A棟内の箔仕掛品の保管用自動立体倉庫は常時約180トンを保管、短納期化を図っている。

 建屋は異物・虫などの混入防止のために二重扉化や部分的なクリーンルーム化も実施され、入室には手洗い・更衣・エアシャワーが必要な職場もある。構内のオペレーターはまばらな印象。例えば巻き替え時間が10~15分間隔の圧延機には若手2人で担当するが、それ以外は1人1台体制だ。

 圧延工程では潤滑剤に毎分2千リットル(ドラム缶10本分)もの大量の圧延油(鉱物油)を使う。焼鈍で柔らかな質感に変化し、同時に圧延油が除去される。平均焼鈍時間は丸2日が必要。

リチウムイオン電池向けで高シェア/中国箔、ハイエンド品集中で対応

 「アルミ箔はプレーン箔と医薬品・食品のパッケージなどに使われる加工箔に大別される。プレーン箔は八尾、蒲原、千葉で、加工箔は群馬、茅ヶ崎、湘南矢畑そして八尾の加工工場でそれぞれ生産している。八尾の看板製品はリチウムイオン電池外装材(厚み25~40マイクロメートル)用のアルミ箔で、大きな国内シェアを持つ。八尾の年産量2万4千トンの内、約4分の1がそれに相当する」(同)。ちなみにプレーン箔年産量は蒲原が1万2千トン、千葉が9千トン。

 次に研磨および仕上げ工程を見学。研磨機は八尾に6台、蒲原に3台、千葉が2台。「この数年の流行はヘアライン仕上げ。特に中国市場で人気があり、冷蔵庫パネル、ゴルフボール箱などで採用されている」(同)という。

 加工工場では12年上市の撥水性材料「トーヤルロータス」などを生産。「トーヤルロータス」は、大手乳業メーカーのヨーグルト蓋の大半に採用されている。その他の製品群ではカーボン粒子をアルミ箔表面に固着した電極素材「トーヤルカーボ」、アルミ電解コンデンサ用電極箔「粉末積層箔」、アルミ箔に孔径1ミクロン以下の微細な貫通孔を形成させた機能性材料「トーヤルパス」、改ざん防止RFIDアンテナ「トーヤルポリカ」などが、開発品では超撥油性材料「トーヤルウルトラロータス」などがある。

 研究部門は65年に日本初のアルミ箔総合研究所として発足、15年には先端技術本部として再発足。電界放出型走査電子顕微鏡(FE―SEM)など、各種検査機器を完備。担当者は食品メーカーからの依頼で、アルミ箔腐食原因の調査を行っていた。

 「中国箔への対応では、リチウムイオン電池用箔などハイエンド品への集中と新たな開発品の上市が経営戦略。加工部門は最終需要家に受け入れてもらえるように撥水・撥油という機能性製品を強化したい。グローバル化ではタイの販社の活用を考えている。アルミ箔は汎用品が中国から流入し、薄利多売の厳しい状況。EV(電気自動車)など新たな潮流もある。ただ、世界で最初に異物検査を開発するなど、当社は先進的気質が持ち味。勝算はありますよ」(同)

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