蓮池薫さん「拉致解決の姿勢を」小田原で講演

 北朝鮮で24年間を過ごした拉致被害者の一人で、新潟産業大学経済学部准教授の蓮池薫さん(60)が31日、小田原市内で講演した。挑発行為を繰り返す北朝鮮について「暴発を防ぐために出口を必ず示しつつ核放棄のためにプレッシャーをかけていけば、遠からず対話に出てくる」と推察。日本政府には「独自の立場で交渉に入り、核・ミサイルと同時に、拉致問題も一気に解決する姿勢を示してほしい」と注文した。

 蓮池さんら拉致被害者5人が帰国してから15年。その後、日朝交渉は遅々として進まず、他の被害者の帰国はいまだかなっていない。蓮池さんは、拉致被害者を帰国させない理由について「北朝鮮が(現金など)見返りを求めていることが決定的」と説明。「今の指導部は『日本政府を相手に交渉しても進まない』と思っている節があり、交渉上のハードルになっている」との考えも示した。

 北朝鮮は核実験やミサイル発射を繰り返し、米国との対立を深めている。「核・ミサイル問題は米朝間のもので、残念ながら日本は蚊帳の外。2国間の話し合いや結論を待っていると、拉致問題は埋もれてしまう」と危惧。北朝鮮の狙いを「核保有国と認めさせたいがために戦争にならない範囲内で、ギリギリのことをやろうとしている」とし、「経済制裁がじわじわ効き、かなり追い詰められている」「これ以上の核実験もミサイル発射も、手詰まりになっていると見える」と分析した。

 拉致問題の解決のために日本政府に必要なこととして、(1)拉致問題で合意できなければ、何も提供しないという強い姿勢を示す(2)安倍晋三首相の訪朝を掲げる(3)拉致被害者の生存情報をより多く入手しておき、北朝鮮に突き付ける−ことを列挙。特に(1)では、北朝鮮の深刻な電力不足を利用し、見返りとして、日本の電気設備や整備技術を提供すれば、核ミサイルの開発資金にもならず、「北朝鮮の大きなメリットにもなる」との私見を述べた。

 講演会は、12月4〜10日の「人権週間」に先立ち、市と市教育委員会が主催。約500人が参加した。

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