絶大だったラミレス効果 独立リーグの未来は?

一般社団法人日本独立リーグ野球機構の会長職に専任することとなった鍵山誠氏【写真:広尾晃】

10年以上走り続けた独立リーグ、この先何を目指すのか?

 四国アイランドリーグplusの代表だった鍵山誠氏は、2016年に退任して一般社団法人日本独立リーグ野球機構(IPBL)の会長職に専任することとなった。四国アイランドリーグplusとBCリーグを統括する独立リーグのトップとして、今年の独立リーグを振り返ってもらった。

――今年のトピックスとしてはどんなものがありましたか?

「一番はやはりマニー・ラミレス選手の高知への入団ですね。BCリーグ、四国を含めて一番インパクトがありました。これで独立リーグの名前を全国の方に知っていただいたんじゃないですか。観客動員も増えましたし、メディアへの露出もかつてないほど増えました。アメリカの友達からフェイスブックで“これ、お前のところだよね、今、テレビでやってるよ”って連絡が来ました。世界中に配信されたんですね。マニーは8月中旬に帰りました。2回目のケガをしたので。本人は嫌になって帰ったのではなく、体力的に苦しかったのでしょう。日本の暑さはアメリカにはないものですから45歳のマニーにはつらかったのではないでしょうか。

 それから、信濃グランセローズが優勝したこと。信濃はBCリーグの創設時からあるオリジナル4球団の1つですが、なかなか優勝できなかった。それが11年目で後期に初優勝を果たし、総合優勝もした。私は信濃のオーナーさんや会長の三沢今朝治さんとも親しいですが、球団運営でずっと努力をしてこられた。今頃、初優勝は不思議なくらいですが、長野県では大きく取り上げられた。惜しくも徳島インディゴソックスに敗れて日本一にはなれませんでしたが、新しい優勝チームが出たのは良かったと思います。

 BCリーグでインターネットでの試合の生中継が本格化したのも大きなエポックです。これまでの“なんちゃって”的なものではなく、鮮明な画像で本格的な中継が配信された。これも大きな話です。これで、全国のファンに向けて、独立リーグの試合を生でお伝えできる体制が整った。これも大きいでしょう。また、独立リーグはNPBの人材供給源として完全に認知されたと思います」

――いろいろなイベントも催されましたが

「8月8日、香川オリーブガイナーズの試合前に、このチーム公式イメージガール『ハニーオリーブ』出身のSKE48高畑結希さんが、仲間4人を連れて香川に帰ってきてくれました。ユニフォームを着て、投球練習、始球式やトークショーなどをしていただきました。そのときのSNSの拡散は凄かった。やっぱりアイドル系のファンの発信力は違うな、と思いました。今の社会では、野球だけでなく、そういう部分も重要ですね」

NPBとの連携強化は不可欠、大きく立ちはだかる「少子高齢化」

――独立リーグの将来という点では、どんな1年でしたか?

「その面では、今年はちょっと停滞した年かもしれません。昨年まではIPBLを通じて、社会人野球(日本野球連盟)と交渉して競技者登録の制限期間(1年)を適用対象外にしたり、日本学生野球協会と交渉して、独立リーグ出身者が指導者になる条件を緩和したりしました。今年は、そういう新しいことがなかった。希望を言えばU23やU21の日本代表に、独立リーグの選手も選出してほしいと思っていましたが、話は進みませんでした。

 私たちとしては、NPBとの関係を強化していきたいのですが、その話もちょっと停滞しています。独立リーグの本拠地がある地方では、人口がじりじりと減少しています。観客動員や売り上げで頑張ろうにも、地域が衰退している。どんどん人やモノが減っていく社会で、経営改善のスピードよりも、少子化、高齢化のスピードが速い。どうやって続けていくかが、今後の課題になってくるでしょう。

 徳島は今年独立リーグ日本一になりましたが、それでもお客は入らない。そういう課題が残っています。その反面、高知はお客も入っていますし、活気もある。だから全然ダメとは言えませんが、人口減少の中でどれだけ存在感をアピールできるかは、独立リーグ共通の課題でしょうね。何かでブレークスルーしないと」

――将来展望は、なかなか厳しいものになりそうですね。

「私たちはとりあえず10年で基礎を作ろうと頑張ってきた。おかげさまで独立リーグの認知度は昔とは比較にならないほど上がりました。でも、その先に何を目指すのかが、今、ちょっと見えていない。そのために、四国とBCがトライアウトを一緒にやったり、経営統合へ向けて話を進めることがあっても良いと思います。

 20年後に存在しているとすれば、どんな独立リーグになっているのか。高齢化がさらに進む中で、どうなっていくべきなのか。それを仲間とともに一つ一つ考えていきたいですね」

(Full-Count編集部)

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