【韓国の鋼管メーカー・ネックスチールの経営課題 米国AD関税へどう対応】〈朴孝政社長に聞く〉輸出先多角化で生産規模維持 米国含め現地生産も検討

 韓国の有力鋼管メーカーであるネックスチール(NEXTEEL、社長・朴孝政氏)は近年、米国向けを中心としてOCTG(油井管)などAPI鋼管の輸出を増やし、韓国有数の鋼管メーカーへと成長した。しかし、米国の保護貿易主義が拡大する中で、同社でも米国商務省から同社製OTCGについてAD関税46・37%が課された。同社の現状や対応策について、朴社長に話を聞いた。(ソウル=宇尾野 宏之)

――まずは、貴社の概要から。

 「1990年に設立し、今年で28年目になる。生産工場は浦項市に3拠点あり、そこにAPI鋼管専用の生産ラインが四つ、国内向けの一般構造用鋼管のラインが一つある。年産能力は合計で約72万トンになる」

ネックスチール・朴社長

――仕入れおよび製品構成(プロダクトミックス)は?

 「95%以上をポスコから購買しており、中国材は使用していない。製品構成はOCTGおよびラインパイプが約60%で、そのほかには一般構造用・配管用鋼管などがある。輸出は米国を含む北米向けが大半になる」

――今年の実績見通しについて。

 「生産量は昨年比で約20万トン増となる50万トンを見込んでいる。エネルギー関連の鋼材需要が好調なことが主な理由になる。売上高は約5千億ウォン(約490億円)。営業利益率は7~10%と見込んでいる」

――米国のAD関税による輸出量への影響が大きい。来期はどう見通しますか?

 「売上高・営業利益・生産量など実績は今年と同程度になると考えている。来年はAD関税の影響でOCTGの販売量は減るだろう。だが、ラインパイプなど他鋼管の販売を増やすことに加え、販売地域の多角化を進めることで、その減少を補っていく」

――今回のAD提訴について、率直な思いは?

 「トランプ政権になり、保護貿易主義が強化されつつあり、不安を感じている。当社製OTCGに課された高いAD関税は相当に不公平だと考えている。当社は中国産熱延コイルを使用しておらず、ポスコ材を使用したという理由だけで課税されたからだ。米国は保護貿易を強化するとしても、法と論理に合致させなければならないはず。そうした考えから、米国商務省のADを不服として米国国際貿易裁判所(CIT)に提訴した。ただ、裁判が結審するまで2~3年はかかるだろう」。

――その間、どう対応しますか。

 「ADはOTCGに対するもの。(当社のもう一つの主力製品である)ラインパイプは今回、高率のADから除かれている。これの販売を増やすことに加え、輸出先の多角化を目指していく。韓国国内の鋼管需要はそれほど変わらないだろうが、国内向けにも注力し、販売を増やしていく」

――米国の保護貿易主義的な動向について、どう思いますか。

 「あくまでも個人的な意見だが、米国鉄鋼業自らが競争力を備えること。これが重要であり、AD関税により米国国内の鋼材価格を引き上げ、そして競争力を向上しようとするのは、米国経済にとっても好ましくないはず。この数十年の間、米国鉄鋼業はAD関税などで保護されてきたが、これは逆に彼らの競争力を低下させていると考えなければならない。設備合理化などの取り組みで、国際競争力を高めることが本当に必要なことなのではないか」

――最後に長期的な展望をお聞かせください。

 「(貿易紛争に巻き込まれないよう)米国などで現地生産できないか投資を検討していく。そのほか、豪州やEUなども候補地になる。韓国国内の生産規模に関しては増やすことは考えていないが、年産能力72万トンという現状の規模は維持していく。将来的には海外生産も含め年産100万トン体制を構築したいと考えている」

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