【新日鉄住金グループ企業の〝今〟(5)】〈トピー工業〉鉄鋼技術基礎に事業領域拡大 異形形鋼技術に強み

 トピー工業は鋼材を生産する鉄鋼事業だけでなく、建設機械用足回り部品の履帯(りたい)や乗用車、トラック・バス、鉱山機械用といった多様なホイールを生産する自動車・産業機械部品事業、クローラーロボットや化粧品原料の合成マイカなどのサイエンス事業、発電事業と幅広い事業を手掛けている。主力事業との関連性が薄く見える合成マイカも電気炉の溶融技術を応用するなど、各事業の源泉は鉄にある。今年6月に社長に就いた高松氏はトピー工業を「鉄鋼技術をベースとしたシナジーを追求する会社」と表現する。また「One―Piece Cycle(ワンピース・サイクル)」のキャッチフレーズが示す通り「素材から製品までの一貫生産」を最大の特長とする。電炉メーカーでありながら、証券市場では鉄鋼でなく輸送用機器の業種に分類されていることも同社のユニークさを象徴している。

 トピー工業グループは〝持続的成長と働きがいのある会社〟を目指し、2016年度から中期経営計画「Growth & Change2018(G&C2018)」をスタートさせている。

 鉄鋼事業部では〝圧倒的なコスト競争力と特色ある異形形鋼技術の強み発揮〟を目標に掲げる。2015年3月に量産体制に入った200トン電気炉の新製鋼工場は電力コストや各種原単位の計画をクリアし、ビレットの自給化など大幅なコストダウンを実現。異形形鋼技術は従来の造船材やリム・履板などの社内材だけでなく、大深度地下トンネル用セグメント部材やフォークリフト用マストレール部材など新たな製品に拡がっている。さらに棒鋼では来年秋にも異形鉄筋を高密度で巻き取ったコンパクトコイル「TACoil(ティーエーコイル)」を国内で初めて製造・販売する。日本の鉄筋市場は直棒が主体のため、新たな市場を創出する挑戦的な取り組みだが、人口減少に伴う人手不足や生産性向上などに応える「時宜を得た商品であり、腰を据えて普及させていきたい」(高松社長)とする。

 自動車・建設機械部品事業では、ホイールのプレス事業部はグローバルでのプレゼンス向上を目標に共通設計ホイールの供給体制を拡大。メキシコやインドに合弁会社を設立している。造機事業部が手がける建機用足回り部品、特に油圧ショベル用の履板は「ワンピース・サイクル」を体現する製品であり、一貫生産の強みを発揮して履帯・履板OEMシェアは国内、世界ともにトップレベルにある。

 G&C2018では18年度の目標を売上高2500億円、営業利益140億円とした。現在の進捗状況について「鋼材価格の上昇と建機部品の好調で売上高はかなり目標に近づけそうだが、利益はもう少し頑張りが必要」(高松社長)と語る。

 新日本住金との関係では2008年10月、旧・新日本製鉄と相互に提携関係を拡大・強化していくと発表。新日鉄が出資比率を約20%に引き上げた。トピー工業は新日鉄住金のグループ電炉として中部地区を担う位置づけだが、一方でホイールや建機用足回り部品などの素材となる鋼板や特殊鋼棒鋼に関して新日鉄住金のユーザーでもある。高松社長は「鉄の使用技術をフィードバックできる点は新日鉄住金グループ企業の中でも極めて特異な存在。シナジー技術を磨いていくことが我々の使命」と同社の役割を語っている。(このシリーズは毎週水曜日に掲載します)

企業概要

 ▽本社=東京都品川区

 ▽資本金=209億8300万円(新日鉄住金20・01%)

 ▽社長=高松信彦

 ▽売上高=2082億3700万円(17年3月期連結)

 ▽主力事業=鉄鋼事業(異形形鋼、一般形鋼、異形棒鋼など)、自動車・産業機械部品事業

 ▽従業員=4568人(連結)、1803人(単体)(17年3月末現在)

© 株式会社鉄鋼新聞社