【ニュースの周辺】〈UACJ・福井製造所 車用アルミパネル仕上げライン新設〉国内生産能力4倍超に 大型投資の〝早期利益化〟課題に

 UACJが福井製造所に自動車用アルミパネル専用の仕上げラインを新設し、国内での車用パネル材生産能力を4倍超の13万3千トンに引き上げることを決めた。環境規制が高まりを見せる中、自動車大手が燃費向上やEVの航続距離改善を目的に車体の軽量化を進めている。成長市場の取り込みに向けて前進するUACJだが、相次ぐ投資に課題も浮かび上がっている。(遊佐 鉄平)

 UACJは国内の自動車パネル用アルミ板マーケットは17年時点で年4万7千トン規模としているが、自動車の軽量化進展によって25年には約6倍の年27万トンに達すると予測。国内でもアルミ材の採用が劇的に進む見通しだ。

 国内ではこのマーケットにUACJと神戸製鋼の2社のみが本格的に参入しており、シェアを5割ずつ分け合っている。相対する神戸製鋼は今年5月、真岡製造所に10万トン規模の連続仕上げラインの新設を決めている。国内拠点へのライン新設を検討していたUACJも「需要の拡大が確実」と判断できたことから、今回の設備増強を決めた格好だ。

 UACJは、最適生産体制を構築する過程で自動車パネルの製造を名古屋製造所に集約してきた。品種集約の観点に立てば名古屋製造所で増産するのが効率的だが、自動車熱交換器材や印刷版など多品種生産の役割を担う名古屋製造所ではすでに月3千トン前後の生産が続き溶解鋳造や圧延能力(上工程)の面で増産余地がない。こうした環境もあり、缶材とLNG輸送船用厚板を集約したが上工程に余力を残している福井製造所に自動車パネルの新ライン建設に至った。

 成長市場への増産投資は前向きなテーマだが、一方で課題もある。現在UACJは、タイと米国で総額550億円の大型投資を実行中。これらの投資回収が済んでいない中で、さらに160億円規模の投資は財務改善の目標達成が遠のく格好となる。また新設ラインがフル操業(年10万トン)に達した場合、今度は鋳造、冷間圧延能力が不足に陥るとみられ、さらなる投資が必要になる可能性もある。先行きの投資を円滑に進めるためにも現在進行中の設備投資の早期利益貢献が求められる。

 国内でライバルの神戸製鋼所は、品質データ改ざん問題で揺れている。今後、自動車のモデルチェンジの際にはUACJが転注の受け皿となることも視野に入ってくるだろう。しかしながら、自動車材の価格交渉は鉄鋼同様に厳しい。アルミパネル材の普及を推進するだけでなく、適正利潤を確保していくことが乗り越えるべき大きな課題となりそうだ。

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