【日本S】「臨機応変」采配で巻き返すDeNAラミレス監督、際立つ3捕手の起用法

DeNA・戸柱恭孝【写真:荒川祐史】

ラミレス采配、際立つ3捕手の起用法

 日本シリーズ第5戦はシーソーゲームの末にDeNAがものにして通算勝敗を2勝3敗とした。ラミレス監督は大胆な采配でチームを勝利に導いた。ポストシーズンに入ってから目立つのが、3人の捕手の起用法だ。

 今季、DeNAは主に3人の捕手を起用した。以下はシーズンの打撃成績。

戸柱恭孝 112試合336打数72安9本52点 打率.214 得点圏打率.316
嶺井博希 52試合121打数30安3本12点 打率.248 得点圏打率.206
高城俊人 29試合56打数14安0本4点 打率.250 得点圏打率.231

 戸柱は打率こそ低いが、打点は12球団の捕手で最多の52打点。特に春先にタイムリーを連発、また9月には月間打率3割をマークした。左打者でもあり、5番を打つことがあった。この点で他の2捕手に比べてアドバンテージがあった。打線に穴が開くことを嫌うラミレス監督は戸柱を高く評価したのだ。しかし捕手としての成績を見れば、評価は変わる。

 3捕手が先発マスクをかぶったときの先発投手の投手成績。

戸柱恭孝 90試合29勝34敗521回 防御率4.09
嶺井博希 34試合17勝7敗200回 防御率3.11
高城俊人 19試合9勝5敗107.2回 防御率3.34

 先発投手の出来不出来に影響される数字ではあるが、戸柱と嶺井では防御率に1点近い差がある。少なくともリード面では戸柱は嶺井よりも優れていたとは言えない。投手陣の信頼も嶺井の方があったのではないかと思われる。

 ラミレス監督は、捕手としての能力には多少目をつぶって、戸柱を優先的に起用したと言えるだろう。なお、高城は濱口遥大が先発のときにだけ先発マスクをかぶっている。その相性の良さを評価したのだ。

CS、日本シリーズの3捕手の成績は…

 しかし短期決戦のCSや日本シリーズでは様相は変わる。以下はCSファーストステージ以降の3捕手の打撃成績。

嶺井博希 9試合26打数3安1本3点 打率.269
戸柱恭孝 9試合15打数0安0本0点 打率.000
高城俊人 5試合17打数4安0本0点 打率.429

 戸柱はポストシーズンまだ無安打。不振を極めている。このこともあって、ラミレス監督は途中から嶺井を多く起用するようになった。高城は濱口である点は変わらずだが、ここへきて打棒が振るっている。

 以下は3捕手が先発マスクをかぶったときの先発の投手成績。

戸柱恭孝 4試合0勝1敗18.2回 防御率5.30
嶺井博希 7試合3勝3敗33.1回 防御率4.50
高城俊人 2試合2勝0敗14.2回 防御率1.23

 やはりポストシーズンでも、嶺井の方がリードでは優れている。また高城と濱口の相性はここへきてますますよくなっている。

 打力を期待していた戸柱が打てないとなると、正捕手を嶺井にスイッチして「守り」を重視する方針に切り替える。レギュラーシーズンの実績にこだわらないラミレス監督の臨機応変な采配が見てとれる。福岡へ戻っての第6戦、ラミレス監督はどんな捕手の起用をするだろうか。

(藤浦一都 / Kazuto Fujiura)

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