日本一に涙のホークス工藤監督、9回内川には「確信めいたものがあった」

ソフトバンク・工藤監督(左)と内川聖一(右)【写真:藤浦一都】

ホークス日本一、劇的すぎる結末に工藤監督「頭が真っ白」

 劇的すぎる結末に、思わず涙がこぼれ落ちた。2年ぶり8度目の日本一は球史に残る大激戦の末に決着を迎えた。延長11回、サヨナラ勝ちで頂点を射止めた。選手たちの手でリーグ優勝時と同じく7度、宙を舞った工藤公康監督は会見で「すごかったです。自分の現役時代も含めて、こんなに緊張して、ドキドキして、ハラハラしてやった日本シリーズはなかった。日本一になれて幸せです」と興奮と安堵が混じった笑顔を浮かべた。

 延長11回。ドラマチックな幕切れを、野球の神様が用意していた。内川、中村晃が連続四球で出塁し、一、二塁。続く松田は三塁正面のゴロで危うく併殺になるところだったが、三塁ベースを踏んで一塁へ送球した宮崎のボールがわずかに逸れて、命拾いした。

 ここで打席に立ったのは川島。カウント2ボール2ストライクからの5球目。DeNA7番手・三上の真っ直ぐを捉えた打球は一、二塁間を抜けた。大歓声が湧き上がったヤフオクドーム。DeNA外野陣は極端な前進守備を敷いていたが、二塁走者の中村晃は思い切って三塁ベースを蹴った。右翼からの送球は捕手の手前で弾み、バックネット方向へと転がっていった。ヘッドスライディングで本塁へと突っ込んだ中村晃。勝負を決する1点が生まれた瞬間だった。

 一気にベンチを飛び出す選手たち。指揮官はコーチと握手、抱擁を交わし、選手たちとも喜びを分かち合った。「正直、頭が真っ白で、勝ったんだ、日本一になったんだというのが湧いてきて……。泣かないぞと決めていたんですが、思わず、一瞬にして苦しかったことが頭をよぎって、ちょっと涙してしまいました」と歓喜の瞬間を思い返した。

 執念の試合だった。2回に松田のソロで先制点を奪ったものの、そこからはDeNA先発の今永に大苦戦を強いられた。7回まで左腕から放った安打は、このソロ本塁打の1本だけ。11個の三振を喫した。先発の東浜は4回まで無失点に抑えながら、5回に白崎にソロを被弾し、同点とされた。さらに一、二塁のピンチを招き、マウンドを降りた。2番手・嘉弥真が梶谷に犠打を決められ、3番手石川がロペスに2点適時打を食らった。一転、追う展開になった。

9回内川の打席には「確信めいたものが正直ありました」

 ドラマはここからだ。長谷川勇が今永からチーム2本目の安打となる二塁打を放ち、柳田の投ゴロの間に1点差に迫った。平凡な投ゴロで、三塁走者の城所が飛び出していたが、DeNA3番手の砂田は一塁へと送球。その間に城所がホームへと帰ってきた。

 1点ビハインドでも、9回はサファテを投入。守護神が無失点に抑えると、9回1死から4番内川が、DeNA守護神の山崎から起死回生の同点弾。工藤監督が「絶対打ってくれると確信めいたものが、正直ありました。打ってくれる、やってくれると思っていた。飛んだときにはさすがだなと。さすがキャプテン」と振り返る一振りが、絶望的な状況からチームを蘇らせた。

 延長に入っても、サファテは続投。10回、そして、まさかの11回も「キングオブクローザー」がマウンドに立った。「2イニングは予定していたけど、3イニング目も行くと言ってくれた」と工藤監督。守護神が来日後初となる衝撃の3イニング救援で無失点に封じると、その裏に歓喜の瞬間が待っていた。

「最後まで諦めない、3アウト目が聞こえるまで、みんなで繋いでいくというホークスの野球を最後の最後に出してくれた」と頼もしい選手たちに目を細めた工藤公康監督。サファテを無理使いしてまで、この日の1勝を掴みにいったソフトバンクの執念。最後の最後、最高の形で実を結んだ。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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