先輩と同じアジアの頂点へ U15侍で躍進する捕手「新しい歴史を作れたら」

侍ジャパンU-15代表・内山壮真【写真:Getty Images】

開幕4連勝でアジア制覇王手、侍ジャパンU-15代表が韓国と激突

 静岡県伊豆市・志太スタジアムで開催されている「第9回 BFA U-15アジア選手権」は4日、大会4日目を迎え、侍ジャパンU-15代表はパキスタンを15-2の5回コールドで下した。打順が1番から3番に変わった内山壮真(石川・星稜中)が初回に先制2ランなど、3安打3打点の活躍。捕手としても、ここまで投手陣を懸命にリードしている。

 誰もが打球の行方を追った。初回、1死三塁。カウント3-1から内山が放った打球は青空に大きな弧を描いた。入るか、入らないか――。左翼手の足が止まり、ほどなく打球はフェンスの向こう側に消えた。先制2ランだ。

「スイングが崩れ、自分のスイングができていなかった。フォームを見直して、自分のスイングでバットを振り抜くことができてよかった。しっかりといい形で打てたと思います」

 今大会、初戦から「1番・捕手」でスタメン出場してきた。初戦ではライトへランニングホームランを打ったが、相手右翼手が目測を誤ったもの。フィリピン戦、チャイニーズ・タイペイ戦は快音がなかった。伊藤将啓監督は「内山は1番だと、自分が出塁をしなきゃという気持ちが強すぎて当てにいっていた」と、この日、打順を3番にした。

 内山本人も「塁に出ようという意識が強すぎた」と振り返る。打とうとするあまり、打撃フォームが前重心になっており、「ここ2日間、いろいろと指導していただいて、しっかりフォームを見直した。後ろの軸で回ることを意識した」という。3、4打席目にもヒットが生まれ、修正した成果を出した。

7人の投手をリード、「すごく頭を使う」

 侍ジャパンU-15代表の扇の要でもある。この日は、今大会初失点もあり、「今日はよくなかった」と厳しい表情。それでも、3戦目まで無失点リレーをするなど、大崩れはしておらず、「頑張ってくれている」と投手陣を労う。

「海外の選手は手を伸ばしたところでボールを捉えるとすごく打球が飛んだり、乗せたりするので、それがないようにしっかりコースを突いて、変化球を混ぜながらうまく打ち取れていると思います」

 小学4年から捕手としてプレー。6年生の時は投手としてマウンドに立った。富山県の出身。「富山で星稜の試合を見た時、すごくかっこいいなと思って、星稜に入って野球をやりたいなと思いました」。全国中学校軟式野球大会で3度の日本一に輝くなど中学野球界の名門・星稜中に進むと、1年からショートを守り、昨年は全日本少年軟式野球大会で優勝した。2年の新チームから捕手に転向。今年は全日本少年春季軟式野球大会で優勝、全日本少年軟式野球大会は2年連続で決勝に進んだ。侍ジャパンU-15代表でも正捕手としてマスクをかぶり、ここまで7人の投手をリードしてきた。

「こんなにたくさんのピッチャーをリードすることはないので、すごく頭を使いますが、いろんなタイプのピッチャーを引っ張るのはすごく楽しいです」

 キャッチャーもショートも「どちらも好き」と言い、「ショートにはショートの面白さがあり、キャッチャーもすごく楽しい」と声を弾ませる内山。憧れていたり、参考にしたりしている選手は誰か、とたずねると、こんな答えが返ってきた。

「憧れは星稜の先輩で…、北村祥治さんです」

 星稜中、星稜高、亜細亜大を経て、現在、トヨタ自動車でプレーする北村が目標だ。

北村は侍ジャパン社会人代表でも活躍、「負けないような活躍をしたいと」

「守備がすごく上手いですし、人間性がすごくよくて。自分もいろいろと教えていただいたりして、目指すべき選手だなと思っています。(星稜中・田中辰治)監督も北村さんのことを褒めていて、話を聞いていると、すごい人なんだなと思います。冬の間、一緒にショートの守備の練習もしました。弟の拓己さん(星稜中、星稜高、亜細亜大、今秋のドラフトで巨人が4位指名)のですが、亜細亜大のパーカーもいただきました」

 内野ならどこでも守ることができるユーティリティープレーヤー。主にショートを守っていたが、2008年に星稜中が全国中学校軟式野球大会で優勝した時、マスクをかぶっていたのが北村だった。大学3年で主将になると、捕手転向が報じられたこともあった。

 ポジションだけでなく、もう1つ、共通点がある。北村は今年の侍ジャパン社会人代表に選出されており、同じ年に日の丸を背負った。「同じユニホームを着ることができて嬉しい」と内山。先月、台湾で開催された「第28回 BFA アジア選手権」では、打順は9番から2番、ポジションはサードからファーストと、チーム状況に合わせて順応し、攻守にわたって2大会ぶりの優勝に大きく貢献。チャイニーズ・タイペイとの決勝では左翼スタンドに豪快な一発を放った。

「北村さんがホームランを打ったりしていたので、北村さんに負けないような活躍をしたいなと思いました」と刺激を受けていた。初戦ではランニング本塁打だったが、この日は柵越え本塁打。侍ジャパンのユニホームを着て、先輩と同じくレフトへアーチをかけた。

 侍ジャパン社会人代表は2大会ぶりのアジア王者に返り咲いた。「先輩と後輩で一緒にアジア選手権を制することができれば、星稜では初めてだと思うので、新しい歴史を作れたらいいなと思っています」。韓国との最終戦も3番で起用される予定。扇の要としても頭をフル回転させて投手陣を引っ張るつもりだ。目指すところは、ただ1つ。

「このチームでやる最後の試合なので、全員の力で勝ち切って、アジア1位を取りたいと思います」

(藤浦一都 / Kazuto Fujiura)

© 株式会社Creative2