【シネマプレビュー】 ノクターナル・アニマルズ

「ノクターナル・アニマルズ」

 アートギャラリーを経営するスーザン(エイミー・アダムス)のもとに、別れた作家志望の夫、エドワード(ジェイク・ギレンホール)から、「ノクターナル・アニマルズ」(夜の獣たち)と題した小説が届けられる。そこには、夜のハイウエーで男たちに妻子を殺された男、トニー(ギレンホール2役)の報復が描かれていた…。

 ベネチア国際映画祭で審査員グランプリを獲得したトム・フォード監督の新作。独特の美学に貫かれた、甘美で残酷な物語だ。

 冒頭、豊満な女性が肉を揺らしながら官能的に踊る。構図、色彩と洗練された映像で描かれた導入部から一気に引き込まれる。「夜の獣」とは、かつてエドワードが宵っ張りのスーザンに付けたあだ名。小説の中では妻子を殺した男たちのことであり、復讐(ふくしゅう)に燃えるトニー自身のことでもある。ギレンホールが2役を演じるため、現実と小説世界が融合。エドワード=トニーが憎むのは、犯人なのか、弱さゆえに妻子を連れ去られた自分なのか、あるいは愛を踏みにじったスーザンなのか。静かな結末の重みが、いつまでも胸のうちに残る。

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