【特集】「電車でGO!」17年ぶり新ゲーム機

開発者が明かした狙い

11月7日に稼働開始のタイトーのゲーム機「電車でGO!!」と、開発者の金田剛・制作1課長=10月23日午後、東京都新宿区

 かつて一世を風靡したタイトーの電車運転の疑似体験ゲーム「電車でGO!」の20周年を記念し、アミューズメント施設向けの新型機が11月7日に稼働を始めた。シリーズの本格的なゲーム機の誕生は実に約17年ぶりだ。感嘆符が一つ増えて「電車でGO!!」という名称となり、遊び方は減点から加点方式に変更した。その狙いと醍醐味は?シリーズのほぼ全作品を遊んだ筆者が開発者に直撃し、いち早く“乗務”してきた。(共同通信=経済部・大塚圭一郎)

 ▽まるで本物の乗務員室

 幅2.6メートル、奥行き約1.5メートル、高さ約2.2メートルの箱型になった新ゲーム機「電車でGO!!」に入って座席に腰掛けると、まるで本物の電車乗務員室のような臨場感あふれる雰囲気に圧倒された。

 正面に55インチ、両脇にそれぞれ44インチの大型画面が並ぶ。正面に続く線路の枕木や、左右のプラットホームとホームドアはきめ細やかなCGで表現されている。1997年に稼働を始めた初代ゲーム機「電車でGO!」の画面は線路下に敷かれた石などのCGがやや粗かっただけに、20年の技術進化をしみじみと実感した。…開発秘話などは鉄道コラム「汐留鉄道倶楽部」の拙稿「電車でGO!」の原点は“我田引鉄”だった!をご参照ください。(http://www.47news.jp/feature/tetsudou/2013/10/246513.html)

 「旧来の電車運転シミュレーションゲームから運転士体験ゲームへコンセプトを変えた」。開発者の金田剛・制作1課長は仕上がりに自信満々の様子だ。幅が初代の約2.5倍の大きなゲーム機にしたのは「家庭に大型画面のテレビが普及している中で、ゲームセンターならではの筐体(きょうたい)にしないと顧客が足を運んでくれないし、スマートフォン向けゲームにも勝てないからだ」と狙いを明かした。

 新作の名称で感嘆符を一つ増やしたのは「電車でGO!」の知名度の高さを生かすために「名前を残しながらも、かつての延長線上ではなく、新生のゲームになったことへの驚きを伝えるため」という。

 遊べるのは、東京中心部を走る山手線内回りの原宿―品川間だ。金田氏は第1弾で山手線を選んだのは広く知られているためとして「ゲームをする時にまず知っているのがフックとなる」と指摘。手始めに東京都と大阪府、宮城、秋田、茨城、埼玉、千葉、神奈川、愛知、岐阜、福岡各県の計20店で稼働を始め、12月初めまでに全国の計約300店に広げる。料金は区間の長さで異なり、1回200円から。練習モードは1回100円だ。

 ▽「運転中止」をやめた理由

 「電車でGO!」の本格的なゲーム機は、函館市電(北海道)と江ノ島電鉄(神奈川県)、京福電気鉄道(京都市)、松山市を走る伊予鉄道の市内電車を楽しめる「がんばれ運転士!!」が2000年10月に登場して以来。このタイミングでの投入は20周年という節目に加え、昨年6月からアミューズメント施設への16歳未満の入場規制がほぼ全国で緩和されたからだ。

 午後10時まで施設利用も可能となり、「商業施設の店舗で家族が食後に一緒に来るようになり、顧客層が幅広くなった」(タイトーの児玉晃一取締役)という。

 業界団体の日本アミューズメントマシン協会によると、アミューズメント産業の運営売上高は減少傾向をたどって14年度に4222億円まで落ち込んだが、規制緩和を追い風に16年度は前年度比7%増の4620億円と2年連続で前年度を上回った。

 幅広い世代の消費者を呼び込むのに「親が子どもに遊ばせるのに電車がモチーフとなったゲームは安心感があり、かつて『電車でGO!』に親しんだ30~40歳代には懐かしく映る」(金田氏)ことが、新生「電車でGO!!」の投入に背中を押した。

 開発に当たって金田氏が「勇気がいる決断だった」と振り返るのが減点から加点方式へ切り替え、決められた区間を全て走れるようにしたことだ。旧作の「電車でGO!」は運転開始時に一定の持ち点を与えられ、制限速度超過、駅の到着時刻の遅延、停止位置目標を超えるオーバーランといったミスのたびに減点される。保線作業員に近づく際に足もとのペダルを踏み警笛を鳴らすと加点されるといったチャンスもあるが、失敗を重ねて減点が続くと途中で「運転中止」と表示され、ゲームオーバーになってしまう。

 筆者を含めた旧作のファンは減点方式に親しみ、ゲームを何度も遊んでルールを覚え、クリアできた際には達成感を抱いていた半面、「難しすぎたため顧客が縮小して先細りになった」(金田氏)という反省があった。また、ゲームが途中で終わる可能性がある減点方式は、基本プレーが無料のスマホ向けゲームに慣れている若年層から「『コスパが悪い』と敬遠される恐れがあった」のも加点方式への変更を促した。

 ▽ブレーキに悪戦苦闘

 筆者は、そんな新生「電車でGO!!」の恵比寿から目黒までの1駅の区間に“乗務”した。加速とブレーキをかけるのに使う「ワンハンドルマスコン」と呼ばれる1本のレバーを握り、扉が閉まった後に「戸閉めランプ」が点灯してからマスコンを手前に引いて始動させる。

 新作の大きな特色は、手元のタッチパネル式画面に表示された戸閉めランプを点灯後に押したり、制限速度が予告された際も画面をなぞったりすると加点されることだ。これは、運転士が乗務中に実施している「指さし確認」をプレーヤーに体験してもらうために工夫した。

 出発して対向電車が近づいてくると、「ライトを落として!」と教えられた。対抗電車の運転士がまぶしくないように、タッチパネル式画面にある前照灯の操作を「明」から「暗」へ切り替えるのだ。ところが、タイミングが遅れて加点されなかったり、すれ違ってから「暗」から「明」へ戻すのを忘れたりと慣れるまで苦労した。雨天時にワイパーを操作する場面も出てくるという。

 面白かったのは警笛を鳴らして加点される場面に、沿線にいる「撮り鉄」へのサービス警笛が導入されたことだ。どこにいるのかは遊んでのお楽しみだが、ヒントを出すとこの操作に気を取られて目黒駅に高速で進入してしまうハプニングがあった。

 筆者が最も悪戦苦闘したのが、一連のゲーム機で初めてのワンハンドルマスコンを使ったブレーキ操作だ。マスコンを奥へ押し、左脇の画面に表示される停止位置目標標識が自分の横に来た時に止めるのだが、強く押しすぎると非常ブレーキが作動して減点される。その時の乗車率によってブレーキの利きが変わるのにも注意が必要だ。

 11メートルのオーバーランという大失敗もあり、「こんなにオーバーランをしたら新聞記事になってしまいますよね」と冗談を言いながら“乗務”を繰り返した。初級はすぐにクリアできたが、ブレーキの練習のために何度か繰り返すと中級、そして上級もクリアできた。「習うより慣れろ」の基本設計は、旧作から脈々と受け継がれているようだ。

 気になる山手線以外の「新路線」追加について金田氏は「開発チームでいろいろと相談しないといけないが、愛好家は全国にいるので私は日本全国の路線をなるべく入れていきたいと思っている」と語り、今後は西日本を含めた路線を随時追加する意向を示した。

 現在はオンラインを通じてゲーム機のソフトを更新できるため、稼働後は路線拡大に加え、既存区間での異なる天候や季節を追加する“2軸”のアップデートを順次進めて目新しさを保つ。金田氏は「青年プレーヤーなら10年続けて遊んで、お父さんになり、子どもが引き継いで次の20年をつなぐようなタイトルにしたい」と訴え、バトンを引き継いだ20年の歴史を誇る“長距離路線”のさらなる延長に意欲を燃やしていた。

タイトーのゲーム機「電車でGO!!」を試す筆者。左手の商業施設「恵比寿ガーデンプレイス」の建物もCGで忠実に再現されている=11月2日午後、東京都新宿区
タイトーのゲーム機「電車でGO!!」の中級をクリアしたことを示す画面。筆者は「熟練技能」に難あり=11月2日午後、東京都新宿区
タイトーの「電車でGO!」シリーズの旧作ゲーム機は今でも一部稼働しており、根強い人気を集めている=11月3日午前、東京都内

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共同通信

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