【印タタ製鉄の成長戦略】〈ナレンドラン社長に聞く〉車向け生産販売「200万トン超に拡大へ」 車分野シェア「44%維持したい」

 インド大手鉄鋼メーカー、タタ製鉄は国内需要の伸長を背景に、生産能力拡大を進めて成長戦略を推進する方針だ。WSAブリュッセル大会出席のため現地を訪れたT・V・ナレンドラン社長に新日鉄住金との冷延合弁事業の現状や展望など含めて聞いた。(ブリュッセル発=一柳朋紀)

――まずは新日鉄住金との冷延合弁事業会社、ジャムシェドプール・コンティニュアス・アニーリング&プロセッシング・カンパニー(JCAPCPL社)の現状と展望を。

 「自動車メーカーからのアプルーバル(品質承認)取得は進んでいる。自動車向けの今年度の生産出荷量は昨年度比で約2倍となる見通しで、順調に増えている。品質面の改善も順調だ。あとは収益面だが、2~3年内には必ず黒字化したい」

タタ製鉄・ナレンドラン社長

――現在の自動車向けの販売比率は。

 「自動車向けでは、タタ製鉄の既存のバッチ焼鈍(BAF)ラインで生産しているものを、合弁会社に生産移管している。インドの自動車需要は堅調で、タタ製鉄の国内シェアは合弁会社を含めて44%ある。自動車市場が拡大しているため、このシェアを維持することでタタ製鉄の生産拡大を図りたい。なお、現在のタタ製鉄における自動車向け販売比率は200万トン程度で、全販売に占める比率は2割前後。従い、自動車向け生産量は200万トンから増えていく見通しだ」

――国内製鉄所の拡張計画について。

 「国内の生産拡大は、主に新たに稼働開始したオリッサ州のカリンガナガールの新製鉄所で行う。1~2カ月以内に決めるつもりだが、今の300万トンを600万トンあるいは800万トンにする考えだ。今年度は約9割の稼働率で、来年度はフル稼働の見込みだ」

 「従来からの旗艦製鉄所であるジャルカンド州のジャムシェドプール製鉄所は、今の年産能力は1千万トンだが、ボトルネック解消などにより100万トンの能力増強を図る。年産1100万トン体制とする計画をすでに進めている」

 「これにより、能力増強後のインド国内の生産数量は1700万~1900万トンとなる」

――欧州事業はティッセンクルップと合弁事業とする方針を決めました。

 「まだ合弁会社が設立できたわけではないが、ティッセンクルップ・タタスチールができれば、年間4億~6億ユーロと見込んでいるシナジー効果のうち、出資比率に見合った半分がタタ製鉄にもたらされ、収益改善効果になる。期待している」

――原料の自給比率は。

 「現在、鉄鉱石は100%で、石炭は30%。今後も変わらない」

――世界3位の市場であるインド鉄鋼市場の伸びをどうみていますか?

 「国内消費量は2017年が前年比4・3%増の8710万トン、18年が5・7%増の9210万トンとみている。GDP成長率が7%程度となっており、鋼材需要は上振れする可能性もあるのではないか」

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