【日鉄住金物産の成長戦略】〈樋渡健治社長に聞く〉「バリューチェーンを強化」 経常益400億円台の収益力に

――上期の連結経常益は171億円。通期経常益は340億円に上方修正し、そのうち鉄鋼事業は245億円(前回予想は220億円)に上振れ。主因は何ですか。

 「鋼材単価が上昇したことが大きい。加えて、米国や中国など海外事業会社の業績が改善した。原料炭の権益会社も利益が増えたが、これは前年同期と比べ原料炭価格が上がった影響が大きい」

――事業会社で、利益貢献度が大きいところは。

日鉄住金物産・樋渡社長

 「絶対額で見ると、国内ではNSMコイルセンター、イゲタサンライズパイプ、住金システム建築などの貢献が大きい。海外のコイルセンターなども堅調な業績となっている」

――国内事業会社は通期で全社黒字見通しですか?

 「いわゆる商社鉄骨を強化するために今年立ち上げたNSSBコンストラクションといった立ち上げ途上の会社を別にすれば、全社が黒字を確保できるとみている」

――三井物産から400万トン相当の商権譲渡を受けることで合意しました。改めて狙いを。

 「現行の中期経営計画では、国内外でバリューチェーンを構築し、強化することを重点課題としている。三井物産からの事業譲渡を受けることは、大きな投資(600億円)になるが、それに資すると判断した」

――取扱い数量は年2千万トンを超える規模になります。

 「現在の取扱い数量(単体ベース1400万トン程度)に三井物産から移管される400万トンを加え、海外のコイルセンターなどグループ会社の取扱い数量(約300万トン)を加えると、一部グループ内重複はあるものの2100万トンに達する規模となる。鉄鋼流通のSCM(サプライチェーン)整流化の中で、ある役割を果たせる規模になると考えている」

――利益面でも、経常益400億円台が射程に入ってきます。

 「今年度の見通しが340億円。これに、三井物産から譲渡される商売が利益率1%程度としてプラス40億円程度。さらに連携シナジーが、日鉄商事と住金物産との経験から考えて30億円プラスアルファ。その二つを合わせた70億円が上乗せできれば、400億円台を狙える収益力になると考えている」

――商権のほかに、三井物産が保有するコイルセンターなど事業会社の株式については譲渡を受けますか?

 「まずは移管する商売を固めて、それ以外のことはその後で検討することになっている」

――来18年度からを対象とする次期中期経営計画では、何がテーマになりますか?

 「国内外でバリューチェーンをさらに強くしたいという方向性は変わらない。三井物産からの事業譲渡以外にも手を打っていくつもりだ」

 「通商問題など保護主義の高まりの中で、海外現地での仕入れをはじめ、サプライチェーンの強化・拡充などが課題になる」

――鉄鋼事業以外について。

 「三井物産からの譲渡はたまたま鉄鋼事業の案件だった。繊維、食糧、産機・インフラなど他の事業でも、先入観を持たず、意味のある検討は行っていくということだ。受け身の姿勢ではなく、そうした案件がないかについては常にアンテナを張っていくつもりだ」

――最近、国内格付け会社からA格を取得しました。何が評価されたと考えていますか?

 「総合商社の一部と同じ格付けを取得できた。専業商社としては、最高の格付けを得たと思う。財務体質が評価されたのはもちろんだが、4事業を展開する複合専業商社としてバランスが取れていることが評価された。今後における成長戦略のための資金需要を考えると、タイムリーな格付け取得だったと思う。今後も四つの事業が補完し合いながら、トータルで収益を拡大できるよう努力していくつもりだ」(一柳 朋紀)

© 株式会社鉄鋼新聞社