【工場ルポ】〈芝浦グループ創業85年 インドネシア・バタム工場②〉大型建機部品も一貫加工 顧客ニーズに対応、能力強化

 芝浦インドネシアバタム(SIB、社長・大川伸幸氏=芝浦シヤリング社長および芝浦シヤリングインドネシア社長を兼務)は芝浦ホールディングス、芝浦シヤリングそしてインドネシア芝浦ウイング(ISW)のグループ3社による出資(資本金は600万米ドル)で2013年4月に設立。

 翌14年秋から工場建設に着手し、操業開始が翌15年8月。社員数は当初、芝浦シヤリングインドネシア(SSI)からの応援スタッフ10人を含めて総勢28人だった。

 5万4826平方メートルの敷地内に幅60メートル×奥行き132メートル、高さ14メートルの工場建屋(6600平方メートル)を建てた。建屋は地続きのA、B2棟で構成され、各棟の前方手前が切断母材(素材)ヤード。それぞれの棟に厚中板や極厚板が高さ1メートルで2千トン分保管できるスペースを確保してある。

工場に接した全天候型の製品置場・デリバリーエリア(庇の下)

 材料は、全量が顧客の指定する完全ヒモ付き材であり、その中にはダンプベッセル部材向けを手掛けることから日本の高炉製耐摩耗鋼板も存在する。

豊富な加工設備群

 スタート当初は切板で月産400トン(1直)を計画し、NCガス溶断機やレーザ切断機、プラズマ切断機といった切板加工機と自動ドリル設備(ADS)を1台ずつ。二次加工設備群として開先加工機4台、ベンディングプレス3台、ロール2台、マシニングセンタ4台、溶接機2台を配置した。荷役設備は天井走行クレーンが計4基、門型クレーンが計18基。

 素材ヤードから工場の長手方向に向かって切断(一次加工)→開先→曲げ・穴あけ・プレスなど二次加工の工程を経て屋外の製品置場(デリバリーエリア)に加工製品を一時保管する。

 このデリバリーエリアは、屋外とはいえ工場建屋と接しており、母屋の壁面(地上6・9メートルの高さ)から幅25メートル×奥行き50メートルの庇(ひさし)を架け、その屋根下1250平方メートル分のスペースをすべて置場として活用できる全天候対応型。雨風を凌ぎ、真夏の直射日光を防ぐので製品管理面はもちろん、作業者の負担軽減にもつながっている。

設備増設、プレス5台

 振り返ると、厳しい建機不況のさなかで工場は立ち上がった。建機大手各社はグローバル市場でしのぎを削り、ライバルに一歩でも先んじるための経営戦略を繰り広げる。

3000トン大型プレスで大型建機用部材加工に対応

 その一環で主要顧客であるCATは、欧州での大型建機生産の一部機種についてバタム工場に完全移管した。

 SIBではもともとダンプベッセルの部品加工を手掛けていたが、こうしたCATの経営戦略にもとづき、顧客ニーズに応える格好で大型油圧ショベル部品についても切断(切板)から開先、穴あけ、曲げ、プレス加工といった下工程まで内製することになった。

 工場建屋の中に入ると新品、中古にかかわらずここ最近で増設した設備が多い。

 主要大型設備について操業当時と直近の設備概要を比較すると、1台だったNCガス溶断機は現在3台に増設。4KW発振器を搭載した門型レーザ切断機も1台から2台に増設した。400Aプラズマ切断機、ADS1台は変わらないが、プレスマシンは3台から今は計5台となっている。

 ベンディングロールも2台体制のままだが、このうち大型機(大同マシナリー製)は最大6メートル幅、最大80ミリ厚まで加工できるためショベルの旋回輪やバケットのロール加工に威力を発揮している。

 それ以外の小物加工や小型機種用のロール曲げは、小型マシン(栗本鉄工所製)で行う。加工内容に応じて設備を棲み分け・選別するのでそれぞれの能力を最大限に発揮でき、生産効率も高い。

19ミリまでレーザ加工

 A棟には、素材ヤードを過ぎた左手に400Aの門型プラズマ切断機(小池酸素工業製)、右手に出力4KW発振器を搭載した門型CO2レーザ切断機1号&2号(いずれも小池酸素工業製)がある。

 プラズマには、規格材の切断が多いため「磁気吹き防止」機能を装備。レーザでは板厚4・5~19ミリに対応する。バタム島内には大出力の大型レーザを保有する同業他社が存在しないので、島内外からの注文も見込まれるという。2号機は今年3月に設置した。

 さらに出荷口に向かって進むと左手に「キット配膳スペース」(CATから支給されるラックに指定された部材をセッティング)があり、その先には芝浦シヤ土浦鋼板部(工場)から移設した最大幅3メートルの機械開先加工機(シンクス製)がある。

 開先設備の前方は、バンドソーや旋盤、ラジアルボール盤といった機械加工設備が設置してあり、ここを「スモールマシンエリア」を称する。

 4KWレーザの前方には前述した大小の3本ロール2台を縦列。それぞれの工程を経た加工製品が全天候型デリバリーエリアに集められ、荷姿を整えて出荷される流れだ。(太田 一郎)

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