【MLB】二刀流獲得を熱望―球団社長が語る、ハム大谷がDバックスに移籍すべき理由

ダイヤモンドバックスのホール球団社長【写真:編集部】

大谷獲得に全力注ぐホール球団社長「本当にスペシャルな存在」

 ダイヤモンドバックスのデリック・ホール球団社長は今オフにポスティングシステム(入札制度)を利用してメジャー移籍することが決まった日本ハムの大谷翔平投手について、獲得に全力を投入する方針を独占インタビューで明言した。2年前に来日した際にも、直接視察した大谷を高く評価していた同社長は、過去にサイ・ヤング賞に輝いた名投手3人を球団に擁するバックアップ体制を「若い投手が成長するために素晴らしい資源」とアピールしている。

 今季Dバックスは93勝69敗というナ・リーグでトップ3の好成績を残した。ワイルドカードゲームでロッキーズを撃破したが、ダルビッシュ有、前田健太両投手を擁するドジャースとの地区シリーズは3連敗で敗退。それでも、開幕前に下馬評の高くなかったチームの躍進は、メジャーに大きな衝撃を与えた。

 そして、来季のポストシーズンでの更なる躍進に向け、ホール球団社長は切り札として大谷獲得を切望している。

「大谷に対する評価、そして、我々が獲得したいという気持ちに変わりはありません。大谷は本当にスペシャルな存在です。ユニークな選手ですね。人生で一度出会えるかどうかのタレントでしょう。現時点では、大谷獲得に関しては、どの球団にもチャンスがある状態です。もしも今年ポスティングされるなら、どのチームにも同じチャンスがあると思っています。いずれにしても、彼次第。ポスティングでのメジャー移籍が正式に決まった時、彼が何を求めるか。いずれにせよ、大谷は唯一無二の存在です。全力で獲得を目指します」

 こう語るホール社長は、Dバックスこそが二刀流のスーパースターの才能が最大限に開花できる環境だと自負している。

Dバックスにかかわる3人のサイ・ヤング賞投手

「うちのチームには絶対的なエースのグリンキーがいます。グリンキーのような、メジャーで長きに渡って結果を残し、色々なチームで活躍してきた投手がチームにいるということは大谷にとっては大きいと思います。彼こそが大谷のメンター(師匠)に相応しいでしょう」

 グリンキーはメジャーを代表する右腕で、2015年12月には6年総額2億650万ドル(約235億4000万円)、メジャー史上最高の年平均3442万ドル(約39億円)という大型契約をDバックスと結んだ。2009年にロイヤルズでサイ・ヤング賞を受賞している右腕は制球力と投球術に定評が高く、今季は17勝7敗、防御率3.20と活躍。ドジャースのデーブ・ロバーツ監督も「投げる戦略家」と評価していた。

 来季メジャー15年目を迎える右腕こそが、最速165キロの豪速球を武器にする大谷を更に進化させる師匠になる、とホール氏は確信する。

「我々(の球団)には、他にもかつてサイ・ヤング賞を受賞した偉大な投手がいます。ランディ・ジョンソンもそうです。ブランドン・ウェブもいます。彼らの存在も若いピッチャーが学び、成長するための素晴らしい資源になると思いますよ」

「ビッグユニット」の異名を執る左腕ジョンソンは、メジャー通算303勝を誇る。サイ・ヤング賞には実に5回も輝いており、2015年に米国野球殿堂入りを果たしている。現在はDバックスの球団幹部で、2015年8月にはホール社長とともに来日。日本ハムの試合をスタンドで視察し、大谷のパフォーマンスに目を細めていた。

 また、2006年にサイ・ヤング賞を獲得した右腕ブランドン・ウェブ投手はDバックスのテレビ中継で解説者を務めている。栄光のサイ・ヤング賞に輝いた3人が大谷の成長に寄与できるDバックスの環境は、大きなアピールポイントになるはず、とホール氏は主張している。

 Dバックスの先発ローテーションにはエースのグリンキーに続き、今季15勝5敗、防御率2.89と一気に才能を開花させたしたロビー・レイ投手や、マリナーズからトレードで加入し、9勝9敗ながら防御率3.49と好成績を残したタイワン・ウォーカー投手という実力者が揃っている。

日本ハム・大谷翔平【写真:石川加奈子】

「最初は彼のプレッシャーを軽減してあげる必要がある」

 では、大谷のDバックス移籍が実現した場合、先発ローテーションで何番手になるのだろうか。

「もしも、彼がダイヤモンドバックスに来るのなら、先発ローテーションの1番手、2番手、3番手どこでも可能です。ピッチャー陣のスプリングトレーニングでの仕上がり具合にもよります。大事なのは、彼のような偉大な才能の持ち主でも、最初はプレッシャーを軽減してあげる必要があるということでしょう。『お前はエースだ。この仕事をしろ!』というのは簡単ですが、環境をガラリと変えたところで、自分のポテンシャルを最大限に発揮できるかどうかはわかりません。

 我々には経験のある投手がいます。グリンキーとロビー・レイの2人がいることで、彼のプレッシャーを軽減できると思います。ただ、間違いなく言えるのは、彼は球団にとっては将来のエースであるということです。オオタニは未来のナンバー1なんです」

 ホール社長はグリンキー、レイという1、2番手の存在こそが、メジャー1年目の大谷をプレッシャーから解放する効果を持つと指摘した上で、将来的なエースと断言した。

 ネズ・バレロ氏が代理人に決まり、日本ハムもポスティングシステムを利用した米挑戦にゴーサインを出した。あとは新ポスティングシステムが合意に達すれば、いよいよメジャー移籍が本格化する。ベーブ・ルースの再来とアメリカで期待される大谷の才能を開花させながらも、メディアとファンのプレッシャーからも保護する方策を、Dバックスの首脳は明かしてくれた。

(Full-Count編集部)

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