注目される起用法、大谷翔平は二刀流で成功できるのか 米記者に聞いてみた

MLB挑戦を表明した大谷翔平【写真:田口有史】

メジャー挑戦を正式表明した大谷、注目される移籍先と起用法

 11日の記者会見で今オフのメジャー挑戦を正式に表明した日本ハムの大谷翔平投手。NPBで二刀流を続けてきた23歳は投打ともに高い評価を受けており、移籍先とともにその起用法も注目されている。そこで、大谷に2度単独インタビュー経験を持つ現地記者にメジャーでも二刀流が可能かどうかを聞いてみた。その回答は――。

 2012年のドラフト1位で入団した大谷はプロ5年で二刀流を貫いてきた。日本一に輝いた昨季はその集大成ともいうべき成績を残し、投手として10勝4敗、防御率1.86、打者として打率.322、22本塁打、67打点、7盗塁をマーク。投打ともに規定には届かなかったものの、史上初めて投手と指名打者の2部門でベストナインに選出された。

 米国でも「和製ベーブ・ルース」として話題となっている23歳はメジャーでもその才能を開花させることができるのか。今回、その問いに答えてくれたのは日本ハムの米ピオリアキャンプで大谷に単独インタビューしたMLB公式サイトのバリー・ブルーム記者だ。

「オオタニについては去年、ピオリアで初めて見た。彼はある試合で韓国のチーム相手にDHで出場した。そして、左腕相手へのアプローチが驚きだった。1ボール、2ストライクからヒットを放ったんだけど、そのバッティングがトニー・グウィンそっくりだったんだ。打席でのアプローチが印象的だった。この男は噂通りの活躍ができる。次の試合では、シャットアウトしていた。オールスター投手のような投球だったよ。そこでファイターズに依頼したら、彼らは単独インタビューの場を設けてくれたんだ」

 故トニー・グウィン氏は現役時代パドレス一筋でプレーし、首位打者を8度獲得した左打ちの殿堂入り選手。その名手を彷彿させる打撃と、圧巻の投球に魅了されたというブルーム記者は大谷との馴れ初めについて、嬉しそうに振り返った。

大谷への単独インタビューも行ったMLB公式サイトのバリー・ブルーム記者【写真:編集部】

人間性にも心酔、「彼はスターになるだろう」

「オオタニと通訳と3人でインタビューは行われた。私にとって彼はほとんど孫のような年齢なんだけど、これまで取材で接してきた中で最も素晴らしい人間性を備えた若者の一人だと感じたよ。彼はすごく物腰丁寧で全ての質問にきちんと答えてくれた。これこそ日本で人気を誇る理由なんだなと思ったよ。

 99マイル(約159キロ)のボールを投げるし、打撃もすごい。投げて打つということは野球界で誰もやったことがなかったことだ。ベーブ・ルースなんだよ。彼はスターになるだろうね。シーズンオフは彼の話題で埋め尽くされることになるね」

 同氏は大谷の人間性に心酔した様子で、今後の大谷フィーバーも予想した。それではメジャーでの二刀流実現についてはどう見ているのか。

 昨年のGM会議でほぼ全球団のGMに「二刀流大谷」について直撃したという同記者は「多くのGMは二刀流について可能だと言っていたよ。そこで今年の春にも彼に会いに行ったんだ」と振り返りつつ、次のように語った。

「オオタニが二刀流で成功できるかは誰もわからない。ベーブ・ルースですら(レッドソックス時代に)ピッチャーとして登板機会がない時に、外野手で少しプレーしただけだった。ヤンキースにトレードでやって来た時には投手ではなく、野手に専念しろということで、そこで終了だった。メジャーと日本の野球はあまりにも違いすぎる。日本でできたことが、そのままアメリカでも再現可能か、ということはわからないんだ」

 そう慎重に分析する裏には、打者としてメジャーに適応できるかどうかという懸念も影響しているようだ。

試される適応力、「メジャーの投手と対峙した時には全く別の話」

「オオタニもまずはメジャーに来て新しい環境に慣れ、どの程度のレベルなのかを把握し、自分がどこまでできるかを証明することになる。特に打者としては若い段階でメジャーに来ることは重要かもしれない。日本からアメリカに来た打者は、どんな実績の持ち主でもメジャーで苦労している。アメリカでスターになったのはイチローとマツイ(松井秀喜)だけだ。日本の投手のレベルは個人的には2Aレベルだと思う。日本で打てる優秀な打者も、メジャーの投手と対峙した時には、全く別の話になる。ボールのサイズから違うのだから」

 メジャー史上30人目の3000安打到達者となったイチロー外野手。2009年にヤンキースでワールドシリーズMVPに輝いた松井秀喜氏。いずれも大きなインパクトを残したが、同氏が指摘するように、メジャーの環境に苦しむ日本人野手は多い。大谷がメジャーの一流投手の投球に対応できるかは、ブルーム氏も予測できないようだ。

 大谷自身は記者会見の中で二刀流への思いについて問われ、「そういう(二刀流の)環境があるかないか、話を聞いてみないとわからない。まずは(二刀流に)挑戦できないと。気持ちだけではどうにもならない」と語った。二刀流として成功するか否かは入団する球団によっても変わってくるだろう。

 アメリカですでにフィーバー状態の大谷狂騒曲。ベーブ・ルース以来となる二刀流はアメリカでも大輪の花を咲かせるのだろうか。

(Full-Count編集部)

© 株式会社Creative2