双日、3Dプリンターで金属部品製造事業に参入 鋳物メーカーと新会社設立

宮城県に一貫工場

 双日は13日、3Dプリンター(三次元積層造形)による金属製品製造事業に参入すると発表した。積層造形技術を持つ鋳物メーカーのコイワイ(本社・神奈川県小田原市、社長・小岩井豊己氏)と共同出資の事業会社を設立。新会社は3Dプリンターの原料粉末製造から金属製品販売までを手掛ける国内初の一貫メーカーとなる。自動車や航空機産業向けに鉄鋼やアルミ、銅など幅広い素材の合金部品製品を供給する計画で、2025年までに売上高1千億円を目指す。

 新会社は「日本積層造形(JAMPT)」。双日66%、コイワイ34%の出資比率で10月に設立した。宮城県多賀城市に工場を新設し、18年7月の操業開始を目指す。

 工場建屋はリースで対応し、上工程設備の金属粉末製造装置1台、下工程設備の電子ビーム式3Dプリンター5台をまずは導入する。チタンやニッケル、コバルト、タングステン、タンタルなどの合金部品も扱う予定だ。金属粉末製造装置は粒度制御がしやすいプラズマ回転エレクトロイド電極法を採用した。

 投資額は運転資金を含め約10億円。現在は、コイワイが宮城県大河原町に構える既存工場で試作品を製造している段階。操業開始後半年から1年かけて自動車や航空機部品メーカーの承認取得を進め、19年以降に本格的な量産に入りたい考え。

 新会社は社員20~30人規模の予定で、社長には双日の保田憲孝氏が就任。東北大学金属材料研究所の千葉晶彦教授が技術顧問に就いた。東北大は新会社と技術面で連携し、同大のベンチャーファンドが新会社への出資も検討する。双日は幅広い販売・調達網を生かし、原料金属の調達などで新会社を支援する。

 3Dプリンターを用いた金属部品の世界市場は急速に広がると予測されている。双日によると、同市場の規模は16年度で約1500億円。今後は年率30%ずつ伸び、20年に3千億円、25年には数兆円に拡大するとみている。欧米や中国勢が先行しているが、双日は新会社を通じて有望市場に乗り出し、国内企業としていち早くシェアを広げたい考えだ。

 3Dプリンターで置き換えが可能な世界の金属部品市場は200兆~250兆円に及ぶとの試算もある。日本は14年に経済産業省の主導で技術研究組合「TRAFAM」を立ち上げ、装置を中心に3Dプリンターの技術開発に取り組んできた。双日、コイワイも同組合に参画している。

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