金属行人(11月14日付)

 最近は季節感がない、と言われることが多くなった。確かに「立冬」や「立春」など季節を表す言葉と実際の気候にギャップを感じることも少なくない。ビジネスでも、例年であればこの季節にはこの商品が売れるという予測が立てづらくなったのではないか▼予測が立てづらいという点では中国経済の先行きも同様だ。中国経済は「三期重複」(成長速度の変換期、構造調整の陣痛期、過去の刺激策の消火期の同時到来)段階への移行など一般的に懸念されるようにさまざまなリスクを抱える。一方で比較的高い消費の伸び率に支えられ、実際の経済は活況を呈しているとの見方もある▼「労働分配率の上昇で低所得者への所得移転が進み、社会全体の消費性向は上昇する。よってしばらくは中国の消費は経済成長率を上回って伸びる」―。日本メタル経済研究所が先週開いたセミナーで、田端祥久氏(日本貿易振興機構前北京事務所長)は長年赴任した中国の現状を独自の視点でこう分析した。さらに「『中国懐疑論』にとらわれず、実際に中国を見に行って判断することが重要ではないか」とも。従来の常識が通じづらくなっている昨今、風の吹く方向を見定めるには現場を訪れ、自身の肌で感じ取るのが最善かもしれない。

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