【新日鉄住金・事業部長インタビュー】〈交通産機品・竹越徹常務〉次期中期、国内製造基盤を強化 クランク軸、世界4拠点で最適生産

――今期の業績動向は。

 「国内需要は好調で、製鋼所は鉄道車両用輪軸・台車、自動車用型鍛造品、産機品ともフル生産が続いている。海外事業会社も総じて好調で増収増益。トラック・バス用鍛造製アルミホイールと永久磁石式リターダ(補助ブレーキ)の売上高は昨年を若干下回るが、事業部全体の利益水準は前期並みと見ている」

――現行中期計画の課題に対する進ちょく状況は。

新日鉄住金交通産機品・竹越常務

 「お客様に評価される製品の開発・拡販と事業のグローバル化を図り、双方とも順調に進んでいる。一例を挙げると操舵台車・低騒音駆動装置・制御装置の拡販が進み、自動車用クランク軸で世界4拠点を結ぶ最適生産体制を状況に応じ生かすなど、グローバルな事業運営体制が整ってきた」

 「昨年9月に交通産機品企画部を新設した。従来は鉄道車両品、型鍛造品など縦割りの事業運営になりがちだったが、管理業務が機能して横串を通せるようになり、海外事業会社も役割を十分に発揮できるようになった。現在の海外事業の好調な収益は、企画部の役割も大きいと考えている」

――次中期計画の基本的な考え方も伺いたい。

 「グローバル化が整ってきたので、この機会を捉えて国内の基盤強化を進める。製鋼所主要設備のリフレッシュを行い、中長期のリスクに対応する中期計画を推進する。例えば、クランク軸はお客様の動きを踏まえて国内需要構造の変化に備えた施策を打つ。台車は東京五輪の関係で鉄道各社が大量の車両更新を計画しており、18~20年度の台車生産は高水準が続く見込み。スムーズにものづくりができるよう人員・設備体制を整える」

 「製鋼所もこの半年でかなり手を打ってきたが、コスト低減、品質向上のためにも外注先や調達先との関係はとても重要だ。台車が代表例だが、ものづくりは多くの協力会社に支えられている。パートナーとの連携を深めていく施策を引き続き具体化していく」

――人材育成では。

 「採用と育成は大きなテーマだ。この事業部には素晴らしい技術が蓄えられているし、お客様の観点でニーズを捉える感性が研ぎ澄まされている。ただ営業担当者は専門分野に特化し過ぎてきた面があり、他事業部との人事交流など様々な施策を実行したい。海外経験者は力をつけて戻ってくるので、グローバルな人員配置を充実させ、海外事業会社をより生かしていく」

――大型クランク軸の機械加工を行う米国NSCLの状況も伺いたい。

 「業績は改善傾向で、次期中期で安定化させる。大型ディーゼル用でサンプル受注に成功し、量産への道筋ができた。日本から素材を輸出し現地で加工するアイテムが主体であるが、現地調達・現地加工もある。材料から加工まで一貫生産で大型の最終製品を手掛ける特色を生かし、お客様のニーズを把握し、グループ内に発信する役割も担っている」

――世界4極のクランク軸の中期見通しは。国内の需要構造変化という話もあったが。

 「国内需要は減少するだろうが、グローバルでは1150~1160万本を見込んでいる。国内の需要動向にはお客様の現地調達化や内製化の動きも影響する。当社はお客様に対してデザイン・イン活動を継続しており、お客様との距離をさらに縮めていくことも考えたい。今後も海外各拠点の需要は増えるとみており、地域戦略に従って、鍛造ラインの増設、既存設備の改造による能力拡大を検討することになる。高歩留り鍛造技術の開発は最終段階に来ており、次期中期で具体化させる」

――鉄道車両品は。

 「車輪生産で言うと、現状は日本が20万枚弱、米国が20万枚強で、北米需要の伸びは今後も見込める。高硬度車輪は量産体制も整えたので、北米の寒冷地向けに増やしたい。インド高速鉄道プロジェクトへも積極的に参画していくし、アセアン市場でも日本の車両メーカーと連携を図っていきたい。試験・検査設備体制を整えて欧州規格への対応も強化していく」

――産機品の製品展開は。

 「文部科学大臣表彰を受けたリターダはトラック用補助ブレーキに加え、性能を生かせる新しい用途を開拓する。鍛鋼ロールは品質向上、生産性向上を進めて、社内のハイテン冷延向けをはじめ鋼材生産を安定的に支える体制を構築する」

――長期的課題で車のEV化への対応策は。

 「今後、変化していくHV・PHVへの対応のほか、フロントアクスルなどクランク軸以外の鍛造製品の需要捕捉も強化していく」(谷山 恵三)

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