【MLB】イチロー.813、ベルトラン.864 引退決めた強打者の知られざる史上NO1記録

走攻守三拍子そろった名選手として活躍したベルトラン【写真:Getty Images】

スイッチヒッターとして史上4位の435本塁打、強打者が誇る驚異の数値

 大ベテランのカルロス・ベルトランが引退を表明した。40歳、プエルトリコ出身。今年から所属するヒューストン・アストロズの世界一を見届けての引退だ。

 ベルトランはスイッチヒッター。NPBではスイッチヒッターと言えば、松井稼頭央、柴田勲など1、2番を打つ切り込み隊長の印象が強いが、MLBにはスラッガーのスイッチヒッターがたくさんいる。ベルトランは、そんな中でも当代一だった。

 MLBスイッチヒッターの通算本塁打5傑 

1.ミッキー・マントル 536本塁打(右打席161本、左打席372本)
2.エディー・マレー 504本塁打(右打席142本、左打席362本)
3.チッパー・ジョーンズ 468本塁打(右打席107本、左打席361本)
4.カルロス・ベルトラン 435本塁打(右打席124本、左打席311本)
5.マーク・テシェイラ 409本塁打(右打席112本、左打席297本)

 ベルトランは史上4位。MLBでは400本以上打った両打が5人もいる。ちなみにNPBでスイッチヒッターの最多本塁打は松永浩美の203本塁打、次いで松井稼頭央の201本塁打。左打席の本塁打が多いのは、右投手が左投手よりも多いからだ。

 上記でもわかるように、ベルトランはスイッチヒッターでも屈指の強打者だった。今年のプロフィールでは身長185.4センチ、体重97.5キロ、がっちりした体躯。いかにも中軸を打ちそうな選手だが、実はベルトランには全く違う一面がある。

イチローを上回る驚異の数字「.864」

 彼は、MLBでもトップクラスの走り屋だったのだ。2009年以降は盗塁数が減ったものの、通算312盗塁を誇る。次の塁を果敢に奪ってきた。そして、ベルトランが凄いのは、ただ単に塁を奪っただけでなく、めったに失敗しなかったという点だ。

 MLBで300盗塁以上した選手の盗塁成功率は以下の通り。MLBの両リーグが揃ってCS(盗塁死)を記録し始めたのは1951年からなので、それ以降の数字になる。

1.カルロス・ベルトラン .864(312盗塁49盗塁死)
2.ティム・レインズ .847(808盗塁146盗塁死)
3.エリック・デービス .841(349盗塁66盗塁死)
4.ウィリー・ウィルソン .833(668盗塁134盗塁死)
5.バリー・ラーキン .831(379盗塁77盗塁死)

 ちなみに300盗塁以上の選手では、イチローは盗塁成功率.813で11位(509盗塁117盗塁死)となっている。

 並みいる韋駄天選手を押しのけて、ベルトランはMLB史上1位。2003年は26本塁打100打点に加え41盗塁、盗塁死はわずか4、2004年は38本塁打104打点に加え42盗塁、盗塁死3。リーグ屈指の強打者だったから、歩かされることも多かったが、一塁に出たとたん、最も危険な走者になっていたのだ。通算打率.279とアベレージヒッターではないので、トリプルスリーは記録していないものの、全盛期にはMLB屈指の5ツールプレイヤーとして君臨していた。

 ベルトランが引退しても、今季打率.318を記録したホセ・ラミレス(インディアンス)、同.303のマーウィン・ゴンザレス(アストロズ)、38本塁打のジャスティン・スモーク(ブルージェイズ)、33本塁打のフランシスコ・リンドーア(インディアンス)と、MLBには次々とスイッチヒッターの強打者が育っている。

 日本でも今季、阪神の大和が両打に転向して話題になったが、規定打席に達したスイッチヒッターはいない。中日・藤井淳志の99安打が最多だ。スイッチヒッターに転向すれば、いろいろと有利なことが増えるし、チームの戦術上も大きな武器になる。日本人打者もどんどんチャレンジしてほしいものだ。

(藤浦一都 / Kazuto Fujiura)

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