大谷の移籍でMLBの概念が変わる? 球団GMが明言「6人ローテを組む」

MLB挑戦表明で大きな話題を集める大谷翔平【写真:田口有史】

米名物コラムニストが指摘「オオタニがMLBのローテーション革命を進める」

 日本ハムからポスティングシステム(入札制度)を利用してメジャー挑戦に踏み切ることを表明した大谷翔平投手。最大の注目は、メジャーでも二刀流で成績を残せるか、だ。米国では投手としての評価が高かったが、今や二刀流選手として期待しているMLB球団も多い。ただ、大谷の移籍が決めれば、先発ローテーションの「革命を進める」ことになると名物コラムニストが分析している。

 日本の先発投手がメジャー球団に移籍する際、大きな“壁”の1つとなるのが中4日のローテーションだ。米国のアクティブロースター(25人)よりも1軍登録メンバーの数が3人多い日本(28人)では、先発投手は6人でローテーションを形成し、基本的に月曜日は試合がないために中6日でマウンドに上がる。これが、先発5人制でオフも少ないメジャーでは、基本は中4日と2日も少なくなる。 

 また、試合数も日本の143試合に比べてメジャーは162試合と多く、当然、1シーズンにおける先発投手の登板数も多くなる。1試合あたりの投球数が日本の方が多いため、投球回数は日本でも200イニングを超える投手が出てくるが、移動の過酷さなども考えると、体への負担はメジャーの先発投手の方が大きい。 

 地元紙「ニューヨーク・ポスト」は「オオタニがMLBのローテーション革命を進める」と題して、名物コラムニストのジェエル・シャーマン記者の記事を掲載。同記者は、先発ピッチャーの1年の登板数が日本の25試合程度から30試合程度に増えることに言及した上で、日本人投手はこれまでにメジャーへの適応を求められてきたと説明している。 

勝利のために二刀流が必要なら…「やるべきことはやらないなんてありえない」 

 ただ、大谷はこの流れを変える可能性があるという。「クラブオフィシャルの間で予想されていることは、このモデルがオオタニのために覆されるであろうとのことだ。なぜなら、かつてないほど類を見ないこの交渉において彼は絶大な影響力を持っているからだ」。新労使協定のもとでは契約金が制限され、マイナー契約しか結ぶことが出来ない大谷。つまり、契約総額などで差をつけることができないため、メジャー球団は入団後の起用法などで差をつける必要がある。日本では二刀流でプレーしてきた大谷の“願い”にどれだけ応えられるかが、大きなポイントになるというわけだ。 

 そして、その類まれな力を最大限に引き出すために、MLB球団が大谷に合わせていく可能性があると、同記者は指摘する。「MLB球団は最大限に休息と回復、そしてパフォーマンスを行うためにどのように先発投手たちを割り当てていくかを再考しているということも言える」とした上で、大谷に興味を持つある球団のGMが「オオタニを獲得したら、6人のローテーションを組むことになる。彼が成功するために求められていることに合わせていくだろう」と話したことを伝えている。 

 先発6人制を敷けば、日本のように必ず中6日というわけにはいかないが、最低でも中5日、時に中6日というローテーションが組める。日本ハム時代と同様、登板間に打者として出場できる可能性はより高まる。 

「彼が、1週間に1度の登板で、次の登板までの間に2~3回ラインナップにも名を連ねるという(日本でやっていた)馴染みのあるパターンを続けるなら、事はうまくいく」 

 シャーマン記者はこのように指摘。ある球団幹部は「考えとしては、自分のチームの全ての選手の力を最大限引き出すということだ。実際そうやって見た結果、彼の才能が生み出し、チームに還元するものを考慮すると、やるべきことはやらないなんてありえないだろう」と話しているという。日本ハムの栗山英樹監督がやってきたように、チームの勝利のために大谷の二刀流が必要だという結論に至れば、新たな形を試さない手はないというのだ。 

「全30球団が大谷に興味を持っているのはほぼ間違いない」

 昨年世界一に輝いたカブスは、複数ポジションをこなせる選手たちを名将ジョー・マドン監督が使いこなし、25人というロースターで最大限の力を発揮するチームとして強さを見せつけた。ベンチ入りメンバーが少ないメジャーにおいて、大谷のような選手に大きな価値があることは間違いない。 

「球団は未だかつてないくらい、25人のロースターの枠を最大限生かすことに目を向けている。よって、多様性はこの上なく素晴らしいものだ」 

「また、選手にとって持てる力をすべて発揮できる最高のパフォーマンスには何が求められているのか、ということにどれだけチームがこだわるか、という話にもなってくる」 

 シャーマン記者はこう言及し、先発投手が必ず30試合以上、200イニング以上を投げなければいけないという時代ではないとも指摘。「今までにそうやってきたからと言って、すべての先発投手に強制的に投げさせるという型にはまった考えは、既に滅んでいる」。大谷がメジャーにおいて新たな価値観を作っていく存在となる可能性は十分にある。「もし先発で30回登板できるなら、それは素晴らしいことだ。しかし、もしオオタニが25回先発してくれたら、それで十分だろう」と話している球団幹部もいるという。 

 新ポスティングシステムがまとまり、大谷のメジャー挑戦が正式に決まれば、空前の大争奪戦となることが予想される。シャーマン記者は「全30球団がオオタニに興味を持っているのはほぼ間違いなく、恐らくそのうちの半分の球団は彼と接触することに全力を注ぐであろう」としている。日本球界に衝撃を与えた男は、メジャーに“革命”をもたらすことになるのだろうか。 

(Full-Count編集部)

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