重仮設大手のジェコス(社長・馬越学氏)の17年上期連結決算は、売上高491億1900万円(前年同期比11・3%増)、経常利益27億3300万円(同11・6%増)と増収増益となった。東京・浜町の本社で馬越社長が決算会見に臨み、事業の現状と展望を語った。(村上 倫)
――上期業績を振り返っていかがですか。
「建機レンタル事業は競争が激化し一部機種の稼働率がダウンしたが、主力の重仮設事業では首都圏の大型プロジェクトが非常に底堅く推移し、重仮設資材の需要にもつながった。総じて増収増益となり、悪くない数字を残せたと思っている」
――主要品目の稼働状況は。
「足元の稼働率は平均で70%台まで上昇している。資産の有効活用として極限まで追求した結果、ひっ迫品種が顕著になっている。工事現場は都合よく動かない。在庫の補填を必要最小限に抑えつつ社内の仕組みなども変えながら取り組んでいきたい」
――今下期の見通しは。
「引き続き堅調な首都圏に加え、関西でも相当需要が増えており、総じて堅調だ。東京五輪関連についても羽田空港国際線の拡張や空港周辺、都市部の道路などの案件も控えている。東北はピークアウトしたが、高水準の需要が続いている。需要環境は上期よりもさらに改善するとみている」
――追い風の中で、どのような事業戦略を展開しますか。
「利益の改善が最大の課題。年間の収益見通しは据え置いたが賃貸単価の値戻しは進んでおらず、工事・加工の採算性も満足のいく水準ではない。需給のひっ迫が強まる中で現場や物流の人手不足、工事原価上昇など懸念事項は多い。採算性向上を図りたい」
「また、工場の人手不足は大きな課題。今期の投資は働き方改革や生産性向上に資する案件が中心で、上期は工場設備の老朽更新や作業環境改善に約5億円、建機の車種構成見直しと更新で約15億円を投資した。下期は重仮設事業で5億円、建機事業で5億円を計画している」
「今年12月には仙台工場に厚板の自動ケレン(仮設材清掃)機とプレスを導入する予定だ。加えて、ICタグを利用したリース品の在庫管理についても実験している。だいぶめどが立ってきたが、実用化にはもう少し時間がかかるだろう。東京工場の事務所棟や協力会社の詰所も建て替え、気持ちよく働けるよう投資を進めている」
――今年4月に立ち上げた工事本部の効果は。
「1カ月で400~450現場が動いているがこれを集中管理し、施工力・技術力の向上と安全確保を図った。その成果もあり、上期の工事量は前年同期比3割増え、下期はさらに1割程度増えそうだ。工事では前年比約18%増となる年間200億円の受注を目指している。若手を中心に技術力や知見を共有できるようになったことも大きい」
――加工・橋梁事業にも注力しています。
「15年に加工・橋梁事業本部を設け2年半が経過したが、成果は出てきている。橋梁は中途採用により増員を図るなど体制を強化している。今年ラオスのODA案件で海外初納入を果たしたが、老朽更新需要なども見込まれる。今後も注力していきたい」
――新製品・新工法などの展開は。
「『Ecoラム工法』は非常に躯体品質がよくなると高評価を受けており、実績は150件近くと急激に拡大している。また、『J―WALLII』についても初適用案件での工事を開始した。さらに『GSS―SPA工法』はこれまで3万2千平方メートルの実績を積み重ね、今期は2万5千平方メートル以上の受注を目標に活動している」
――ジェコスベトナムの動向は。
「設立から1年強が経過したが、同国での認知度がかなり高まり、多くの日系ゼネコンからお話をいただけるようになっているが、まだ売り上げは目標に届いていない。これまでODA案件が中心だったが、民間建築案件も受注している。3年以内の黒字化を目指し、地道に取り組んでいきたい」
――長期ビジョン『ジェコスグループ10年ビジョン』を策定しました。
「当社は来年で創立50周年を迎えるが、これに先立ち明確に目指す姿を示した。現在は地下工事の一部のみを担っているがアセアンを含む地域で〝地下に関することは当社にお任せ〟という企業体にしたい。現在の収益性を維持しつつ売上規模倍増を目指したい。伸びゆくアジアの需要規模を考慮すると、海外売上比率は10%程度は必要だと思っている。建機レンタル事業についても、現地での新会社設立も視野に入れながら海外へと地域を拡大していく」