【製鉄所のプラントエンジ会社・山九の人材育成策】〈中村公大社長に聞く〉内外で教育体制強化

協力会社の育成活動も支援

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 製鉄所のプラント建設や操業支援などを手掛ける山九が現場スタッフの人手不足に対応し、さまざまな取り組みに力を入れている。人手不足の現状と人材育成の取り組みについて中村公大社長に聞いた。(石川 勇吉)

――少子高齢化に伴う人手不足にどう対応しますか。

 「山九グループの社員数は国内だけで約1万6千人。社員の在職期間を40年とすれば年400人ずつ採用しなければ現状維持が難しい計算になる。当社の使命はお客様の現場を守ること。現場を守る人材の確保・育成は生命線だ。事業規模の拡大などを見据え、今後は年500~600人のペースで採用したい。ただ、どの企業も人材確保に力を入れ始めており採用を増やすのは簡単ではない。これまで縁の薄かった拠点のない東北や北海道などにも採用活動で足を伸ばしている」

山九・中村社長

 「先日、投資家向け広報でロンドンに行った際、どの投資家にも必ず人手不足の対応を問われ、関心の高さに驚いた。彼らは人手不足に対応できるかが日本企業の潜在的な成長力を見極める試金石になると考えている。人材を確保できない企業は淘汰の波にさらされ、生き残った企業がその分シェアを増やすとみている」

――現場力を維持するための取り組みは。

 「人材を確保し、スペシャリストを育て、技術・技能を担保し続けることが基本だ。教育施設として長崎県平戸市に大卒の新入社員向けの『錬成館』を構えているほか、現場で働く社員向けの『能力開発センター』が千葉県君津市と北九州市にある。こうした教育施設を生かし、長年かけて培ったノウハウや技能をベテランから若手へ絶え間なくつなぐ。最近はグループ会社や協力会社の社員教育のサポートにも力を入れている。安全や工事品質の確保にはグループ企業や協力会社との密接な連携が欠かせない。製鉄・化学プラントの機械工事に携わるグループ会社や協力会社からなる『機工懇和会』も組織している」

 「今後は国内だけでなく海外拠点の教育体制を充実させることも課題だ。海外では現地採用の社員が1万4千人ほど働いている。能力開発センターと同じような教育施設を海外でも考える必要があるかもしれない。日系の鉄鋼メーカーや化学メーカーのプラント建設で日本と同じ安全レベル、工事品質を安定して提供できるよう国内外で人材力を磨く」

――人手不足が叫ばれる一方、国内製鉄所では老朽更新などでプラント関連の工事量が増える傾向にあります。

 「コークス炉が典型例だろう。当社は機械工事に力を入れている。コークス炉は国内に40炉団ほどあり、すべて刷新するには20~30年かかる。長丁場になることを考えると、やはり人材を確保し、スペシャリストを育てて技術・技能を担保し続けることが重要だ。お客様の対話と経験を重ねるうちにノウハウがたまり、工期短縮の技術提案などで恩返しができるようにもなる。手前味噌だが、当社は高炉改修の機械工事を得意としている。同じようにコークス炉のスペシャリストを育てるつもりだ」

――人材採用戦略の一環で屋外広告を積極的に活用しています。

 「高校生や大学生が会社を選択する時にはやはり認知度がものを言う部分がある。しかし我々の仕事はBtoB。社名自体が知られていない場合も少なくない。今年の夏から甲子園球場のバックスクリーンに社名入りの看板を出している。九州発祥の企業ということもあり、福岡市のヤフオクドームではホームランテラスのネーミングライツも取得した。採用で効果が出るのを期待している」

――現場力向上に向けた最新ITの活用は。

 「IoTやビッグデータの活用を検討したい。若手のアイデアにも期待している。『コネクテッド・インダストリー』と言われるが、当社は長年にわたり物流と機械工事、操業支援という3事業を有機的に結びつけて現場力を高めてきた。この強みをさらに強くできる可能性がある」