Jリーグ懐かし外国人助っ人、赤いほっぺでお馴染みの元名古屋デュリックスは今…(後編)

懐かしのJリーグ助っ人、元名古屋デュリックス。前回のインタビューでは、現在の職場である東南アジア・ベトナムのサッカー事情や若手育成の状況などを語ってもらいました。今回は、お待ちかね、現役時代やJリーグ時代の思い出についてのお話。ベンゲル監督とのエピソードも登場、名古屋ファンは必読です。

Jリーグ時代を振り返って…ピクシー、ベンゲルとの思い出

出典: http://nagoya-grampus.jp/team/top/record/

-ここからは、ご自身の現役時代を少し振り返ってもらいたいと思います。フランス、日本、スイスでプレーしましたが、現役時代で一番の思い出は?

デュリックス(以下D)「一番の思い出は、名古屋時代です。インタビュアーの君が日本人だからじゃないよ(笑)。天皇杯での優勝は絶対に忘れられません。カンヌ時代は、若き日のジダンやミクーとチームメイトになりました。スイスのセルヴェットでは、リーグ優勝も経験できました。18年のプロ生活で色々なところに行き、大勢の人々に会いました。一つ一つが大切な思い出です。」

-一緒にプレーした中で最も印象に残っている選手はだれですか?

D「強烈だったのは、名古屋の“ピクシー”ストイコビッチ。もちろんフランス代表で一時代を築くことになったジダンとミクーも素晴らしかった。彼らと同じピッチに立てたことを今も光栄に思っています。」

-さすが、ビッグネームがどんどん出てきますね。では、最も影響を受けた指導者は?

D「それは間違いなくアーセン(ベンゲル)です。彼がモナコを率いていたとき、私を引き抜こうとしてくれましたが、当時の私は、まだそれほど有名な選手ではなかったので、あちらの会長が納得せず、実現しませんでした。でも、ご存じのように、アーセンとは後になって名古屋で一緒に仕事することができました。」

Jリーグ移籍秘話を明かす

-フランスで活躍していたあなたが、なぜ設立したばかりのJリーグに来ることになったのでしょう?

D「カンヌにいた頃、既に多くのものを手にしていましたが、違う環境でプレーしたいという気持ちもありました。そんなとき、名古屋の監督に就任することが決まっていたアーセンから“君が興味を持ちそうな、いい計画がある”と連絡があって、一緒にやらないかと誘われたのです。当時のJリーグは、ドゥンガ、マッサーロ、スキラッチ、ハシェックなど世界の一流選手が集まるエキサイティングなリーグでした。アーセンが話す計画はとても魅力的で、乗ることにしたんです。」

-名古屋でチームメイトになったピクシーやトーレスと比べると、デュリックスの在籍期間は2年。Jリーグでプレーした期間は長くなかったですね。

D「名古屋で素晴らしい2シーズンを過ごした後、実はガンバ大阪からも誘われましたが、家庭の事情でやむなくフランスに帰国することになりました。日本に残らなかったことは、少し後悔しています。小倉や米倉、岡山のことは、よく覚えています。岡山は、十数年前のクリスマスにフランスまで遊びに来てくれました。当時のチームメイトのことを思い出すと、懐かしい気持ちになります。」

日本で感じたカルチャーギャップ

-デュリックスが名古屋に在籍したのは95~96シーズン。当時はまだJリーグが開幕した頃の熱気が残っていました。サッカー強国フランスから来て、カルチャーギャップを感じましたか?

D「日本に行って最初の試合で、たしか大量失点で負けたのですが、それでもサポーターたちが声援を送りながら拍手していたのを覚えています。ヨーロッパでは、考えられないので、奇妙でした。アーセンのことで思い出すのは、初めのうち、サッカーを知らない通訳のことをかなり心配していました。選手たちに指示や指導内容がきちんと伝わるのか…でも、それは徐々に改善されていったようです。日本の選手たちは、教わったことを素早く吸収していきましたが、まだ時々同じミスを繰り返していた印象です。でも、みんなとてもマジメに練習に取り組んでいました。練習後、疲れているだろうに走ってホテルまで戻ってくる選手もいて驚きました。日本人の勤勉さには感服します。」

親愛なる名古屋サポーターへ…

-少し前のことですが、名古屋グランパスは2012年のクラブ設立20周年のとき、歴代所属選手の中から選ぶドリームイレブンを発表して、デュリックスも選出されました。今シーズン開幕前には、次期監督候補にデュリックスの名前が挙がるなど、名古屋のファンは、今もあなたのことをよく覚えているようです。ファンたちになにか一言メッセージをお願いします。

D「本当に!?監督の話もそうですけど、全然知りませんでした。退団して長い時間が経つのにドリームイレブンに選ばれるなんて、とても光栄です。他には、誰が選ばれてるんですか?ピクシーは…当然いますよね。トーレスは…いる?あ、やっぱりね。名古屋時代は本当にいい思い出です。瑞穂スタジアムはいつも大勢のサポーターでいっぱいでした。熱心に応援してくれて、とても感謝しています。いつかまた名古屋に行きたいです。私が育てたアカデミー生を連れていければ、素晴らしいですね。」

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