若者の足が遠のくプレミアリーグ。原因は?

イングランドでは、近年スタジアムにフットボールを観に行く若者が、少しずつ減っているようだ。 そのアンケートから見えてきたその原因とは。

チャントが響く満員のスタジアム。毎週末競技場に足を運び、クラブに忠誠を誓うサポーターの声援は、試合の雰囲気をより一層見ごたえあるものにする大切な要素であり、フットボールにとってはなくてはならないものだ。無観客試合など、いくらバルサvsマドリーのクラシコであっても、全く興ざめしてしまうだろう。

しかし、その大切なサポーター、特に若い世代がスタジアムへ行き試合を観戦する機会が減ってきているようだ。BBCが伝えている。

チケットが高い?プレミアのシーズンチケット事情

Price of Football 2017: Young fans 'need more help' - Mark Hughes

BBCによると、アンケートに参加した18~24歳の82%が、高額なチケットの値段がスタジアムで観戦することを難しくする一番の障害だ、と答えたそうだ。

しかし、今シーズンプレミアリーグのほとんどのクラブは、チケット価格を昨シーズンと同じか、または値引きしている。それにもかかわらずこの回答が多くを占めているということは、多くの若年層は値引きを実感できていないということなのかもしれない。

それでは実際にプレミアリーグの各クラブが、どれほどの値段でシーズンチケットを販売しているのだろうか。各クラブの最も安いシーズンチケットの値段を、リストアップして見比べてみよう。

参照:Daily Express

今シーズンプレミアリーグに昇格してきたハダースフィールドが、最も安い価格でシーズンチケットを販売しているクラブだ。ホームで行われるリーグ戦は年間19試合あるので、1試合あたり約£10.5(※1 約1575)ほどで観戦できる。

一方で、もっとも高額なのはアーセナル。ずば抜けて高いが、これでも昨シーズンから£100以上値下げしているのだから、これまでがいかに高額だったかがわかるだろう。こちらは1試合あたり£46.9(約7035)もかかる。それでもエミレーツスタジアムは毎回ほぼ満員になるのだからすごい。

これはあくまで私の想像だが、観光客や、海外から試合を観に来た熱狂的なグーナーが、ある程度の数を占めているのではないだろうか。

しかし、このシーズンチケットは本当に高額なのだろうか。次はラ・リーガとセリエAと比較してみよう。

ラ・リーガ、セリエAはともに良心的。やっぱりプレミアは...

まずはラリーガ。世界でも1,2を争う強豪バルセロナとレアル・マドリードが、ともにお手軽な価格でシーズンチケットを提供しているのが印象的だ。

参照:as

最安値のチケットを提供しているレバンテは、プレミア、ラ・リーガ、セリエAのクラブの中でもっとも低価格なシーズンチケットを販売するクラブだ。1試合あたり約€7.6(※2 約1026)でトップリーグの試合を観戦できるのだから、サポーターにとっては大変ありがたいはずだ。

またもっとも高額なジローナとセビージャのそれも、€350(約47250)なので手の届かない金額では全くない。

参照:minformo

そしてセリエAだが、こちらも比較的手ごろな金額でシーズンチケットを提供するクラブが大半を占める。イタリアは他の2リーグに比べるとスタジアムに空席が目立つのだが、今シーズンのミランとインテルは、シーズンチケットを3万券以上販売してたようだ。

やはり目に付くのはユヴェントスのとびぬけた数字。数年前に新スタジアムを建設したことが大きく影響しているのだろうが、それでも3万券近く売り上げている。ビアンンコネーリは誰もが認めるセリエAのドンである。勝つクラブの試合には人が入るのだ。

こうして比べてみると、いかにプレミアリーグのチケットが高額かがわかるだろう。イングランドの若者たちが、スタジアムに足を運ばなくなるのにも頷ける...と、言いたいところだが、別の調査では、実はスタジアムに試合を観に行くのにかかる金額は、考えられているほど法外ではないことが分かったようだ。

平均チケット価格は£32。£60以上のものはたった6%

The true cost of attending Premier League games revealed - and it's not as much as you might think

The INDEPENDENT紙の報道によると、今年プレミアリーグが行った2度目のアンケートによると、観客が支払った1試合当たりのチケット料金は平均£32であり、アンケートに答えた半分以上の人が£30以下の値段で試合を観戦していることが分かった。

アウェイチケットに関しては平均£26であり、£60を超える金額のチケットは全体の6%に過ぎないことも判明。一方で£20以下のチケットは全体の1/4を占めている。前述のアーセナルもシングルマッチチケットは、£20以下のものも販売してる。つまりあまりに高すぎて観に行けない値段、というわけではないのだ。

しかしBBCの調査によると、イングランド、スコットランド、ウェールズの190クラブ中135クラブが、若年層向けにチケットの値段を引き下げたにも関わらず、アンケートに答えた55%の若者がチケットが高すぎるという理由で、完全にいくのをやめるか、今までより観戦する試合を減らすかしているそうだ。

それではなぜ若者はチケット価格に不満を持っているのだろうか。

その背景について、アーセナルの監督アーセンヴェンゲルは、「ライフスタイルが変わってきているんだ。彼らはスポーツをあまりやらず、コンピュータに時間を費やす」とコメントしている。

ライフスタイルの変化だけでなく、より多きな問題として若年層の経済的な困窮があげられるのではないだろうか。

近年ヨーロッパでは若者が仕事を見つけることが難しくなり、生活に余裕を持てなくなっている。

BBCのインタビューに答えた人の中にも、休日に出かけるお金を貯めるためには、フットボールの試合を観に行くのを控えなければいけないんだ、と答える人や、アウェイの試合も観に行きたいけれど、移動費や食費で£100は簡単に使ってしまうから、そう易々とは行かれない、と話している人がいた。

サポーターのいないスタジアムなんて

どうしてプレミアリーグは面白いのだろうか。

世界中から超一流の選手たちが集まってくるからだろう。

最高の監督が指揮を執るからだろう。

でも、そこにサポーターの声援がなければきっとつまらないはずだ。

プロフットボールは、いい大人が一つのボールを追いかけまわす、よく考えれば全く訳の分からない催しだ(スポーツとはそういうものだが)。

そんなプレーヤーたちの周りには、それを自分のことのように真剣に捉え眺める人々がいる。彼らは、長方形の枠の中にボールを入れば、誰もが子供のように飛び跳ねて歓喜したり、頭を抱えてガックリ落ち込んだりする。数万人にもおよぶそんなサポーターたちがいてこそフットボールはフットボールであり、価値があるのだ。

フットボール界だけではどうにもできない問題であることは、この記事で書いてきたことを見れば明白だが、本当にスタジアムに行きたいサポーターたちが観に行ける環境を、プレミアリーグには引き続き作ってほしい。

スタジアムのワクワクするような雰囲気があってこそ、観ていて楽しいのだから。

※1:£1=150で計算

※2:€1=135で計算

若者の足が遠のくプレミアリーグ。原因はチケット価格だけではないペペ土屋のTwitter

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