西武3選手、元メジャーリーガー、元中日「ディンゴ」も…豪WLの注目は?

西武・森友哉【写真:編集部】

西武からは高橋光、中塚、森が参戦

 日本一を決める戦いが終わり、プロ野球は各チームが来年の頂点を目指して戦力の補強、整備を図っている。冬の到来は目前だが、まだベースボールシーズンに終了が訪れる気配はない。海の向こうではウィンターリーグが続々と開幕し、参加選手が腕をぶしている。

 毎年、この時期になると、アメリカのアリゾナ、ドミニカ共和国、プエルトリコ、ベネズエラなど、世界の野球どころで開催されるショートシーズンのリーグ戦がウィンターリーグだ。シーズンオフに実戦を求めて、メジャーリーグのチームで主力を張る選手が参戦することも多い。

 NPBの球団も、若手選手を中心に派遣している。イチロー外野手(前マーリンズ)はプロ野球のシーズン最多記録となる210安打を打ち立てる前年のオフに、ハワイのウィンターリーグでMVPを獲得するなど腕を磨いていた。近年では、筒香嘉智外野手(横浜DeNA)がドミニカ共和国で武者修行を敢行している。

 オーストラリアン・ベースボールリーグ(ABL)はレギュラーシーズンが11月から翌年の2月であるため、ウィンターリーグのひとつに含まれる。今年はNPBから、埼玉西武の高橋光成投手、中塚駿太投手、森友哉捕手が派遣されることになった。高校野球で全国制覇を成し遂げてドラフト1位で入団し、次代のチームの顔として期待される高橋と森は、今季の飛躍が期待されていたが、ともに故障の影響でわずかな1軍出場にとどまっている。2位に終わったチームの総合力底上げへ、来季は投打のキーマンとなりうる存在だ。

かつての全米ドラ1はメルボルンで森と3、4番コンビ形成

 新人の中塚は、2軍を主戦場に先発と救援をこなしながら一定の結果を残した。ウィンターリーグに派遣されたことからも、チームの期待の高さがうかがい知れる。なお、この3選手が出場予定のメルボルン・エイシズの計6試合は「パ・リーグTV」でライブ配信される予定だ。

◯ライブ配信予定日時
11月19日(日)メルボルン対パース 11:00~
11月23日(祝・木)アデレード対メルボルン 17:30~
11月25日(土)アデレード対メルボルン 17:30~
12月1日(金)メルボルン対ブリスベン 17:00~
12月7日(木)キャンベラ対メルボルン 17:00~
12月15日(金)メルボルン対シドニー 17:00~
※時間はいずれも日本時間で、都合により変更と雨天中止の可能性あり

 今季のABL参加選手で注目したいのは、メルボルンのデルモン・ヤング外野手とピーター・モイラン投手、ブリスベンの林智勝内野手の3人だ。

 ヤングは2003年のドラフト全体1位指名でデビルレイズに入団。野球専門誌『ベースボール・アメリカ』が毎年発表している有望株のランキングでは4年連続3位以内に入り、2006年には1位に選ばれた(2011年にア・リーグのMVPとサイ・ヤング賞をダブル受賞したジャスティン・バーランダー投手が8位)。メジャー通算10年で打率.283、109本塁打と高すぎる期待に応える成績を残すことはできなかったが、まだ32歳と老け込む年ではない。2015年を最後に離れているメジャーの舞台復帰を目指す姿に、埼玉西武の若手3人が学べることもあるかもしれない。

 変速のサイドスローから打者のタイミングをうまく外すモイランは今季、ロイヤルズでリーグ最多の79試合に登板した。38歳のベテラン右腕は、キャリアで酸いも甘いも噛み分けている。プロ入りは早く、17歳でツインズと契約したが、芽が出ずに2年でオーストラリアへ帰国。製薬販売員として働きながらクラブチームでプレーを続け、2006年にはWBC代表に選出された。その直後にブレーブスと契約し、トミー・ジョン手術を2度経験しながら通算460試合に投げている。来季の戦力として獲得に興味を示すメジャー球団はあるだけに、母国でのプレーでしっかりアピールしておきたいところだ。

ブリスベンで監督を務める元中日「ディンゴ」

 林の名前に見覚えのある日本の野球ファンは多いかもしれない。台湾プロ野球では通算打率.319、253本塁打を放った強打者で、最多本塁打のタイトルを3度獲得。2015年にはMVPに輝き、翌年にまたがって連続試合出塁を109まで伸ばしたことが話題になった。台湾代表の常連選手で今春には自身3度目となるWBC出場を果たし、契約後の現地11月14日にABL公式サイトで「Taiwanese superstar」として紹介されている。

 懐かしい名前を挙げると、ブリスベンの指揮を執るのは2000年に中日で「ディンゴ」の登録名でプレーしたデーブ・ニルソンだ。日本では18試合にプレーしただけだったが、同年のシドニー五輪にはオーストラリア代表として参加して、日本戦で黒木知宏氏からホームランを放った。前年にはメジャーのオールスターに選出され、1996年にはリーグ6位の打率.331を残している実力者だ。

 日本から8000キロ以上離れた、オーストラリア南東部メルボルンでの開幕戦でヤングと森はラインアップの3、4番に並んだ。3試合を消化してヤングは無安打、森は単打が1本。そろそろ長打も飛び出すかもしれない。

 オーストラリアン・ベースボールリーグの「パ・リーグTV」によるライブ配信は、現在東京ドームで行われている「ENEOSアジアプロ野球チャンピオンシップ2017」の決勝日(11月19日)から12月中旬までを予定している。派遣される選手だけではなく、来季が待ち遠しくなる日本の野球好きにとっても、異国情緒の漂うボールパークでのベースボールは刺激になるのではないだろうか。

(広尾晃 / Koh Hiroo)

© 株式会社Creative2