ダイエットしたい40代がしてはいけない運動と注意点

年齢と共に増える体重に焦り、慌ててダイエットや運動を始める人も多い世代。運動習慣は身体にとってメリットの大きいものですが、運動が原因でケガをしたり、体調を崩したりしてしまっては本末転倒です。

年齢と共に太りやすくなる原因は、筋肉量と基礎代謝の低下

若い頃は、体重が少し増えてしまっても、流行のダイエットを実践したり、一食抜くようなやや無茶な方法でもすぐに体重が戻り、体重をコントロールすることは簡単にできると思っていた人も多いかもしれません。しかし年齢を重ねるにつれて、こうした「一夜漬け」的なダイエットでは太刀打ちできなくなります。その主たる要因は加齢による基礎代謝量の低下です。

加齢に伴う基礎代謝量の低下は、体重から体脂肪量を引いた除脂肪体重の減少が原因として挙げられます。除脂肪体重は体脂肪率が測定できる体重計を用いれば、以下の数式で簡単に出すことが出来ます。

・除脂肪体重(kg)=体重(kg)-(体重×体脂肪率÷100)

除脂肪体重には身体に含まれる脂肪量以外のものがすべて含まれますが、大人の身体は臓器や骨の重さに大きな変化はないと考えられているため、除脂肪体重の変動は筋肉量の変化を表しているとされています。除脂肪体重が減ってきた場合、筋肉量が低下していると考えられるのです。

基礎代謝のエネルギー消費を行う臓器として、骨格筋、脂肪組織、肝臓、脳、心臓、腎臓などが挙げられます。体重60kg、安静時基礎代謝量が1200kcalの人の例を挙げると、骨格筋は全体の約22%を占め、1日に264kcal消費することがわかります。

一方で脂肪組織の基礎代謝は骨格筋の約1/5ほどであり、比率にして4%、48kcalのカロリー消費であることがわかります。このように脂肪組織をたくさんため込んでも、基礎代謝量への影響は大きくなく、逆に筋肉量が減ってしまうことの方がより基礎代謝が落ちてしまうということになります。

ヒトの臓器・組織における安静時代謝量

引用元:厚生労働省e-ヘルスネット「ヒトの臓器・組織における安静時代謝量」より改変

(糸川嘉則ほか 編 栄養学総論 改定第3版 南江堂, 141-164, 2006.)

女性ホルモンの影響によっても減少してしまう筋肉量

加齢によって女性ホルモンの分泌量も変わってきます。女性ホルモンには大きく分けて「エストロゲン」と「プロゲステロン」という2種類のホルモンがありますが、このうちのエストロゲンが加齢とともに減少してくることによって、内臓脂肪の分解・代謝レベルが落ち、脂肪が蓄積されやすくなると言われています。

また脂肪はたくさんついていると身体の保温効果が高いようなイメージを持たれますが筋肉と違って熱量を生むことはなく、体温を維持する能力が低いため、身体全体の「冷え」にもつながります。

「食べる量が20代の頃と変わらないのに体重が増えやすくなった」

「お腹周りや背中、お尻などに脂肪がついてたるんでいるように見える」

「運動しているのにあまり体重に変化がない」

という場合は、脂肪の蓄積と筋肉量の減少によって基礎代謝が低下していることが一因として考えられるでしょう。これらを踏まえて、40代から行う運動の中で特にするべきではないと考えられるものをいくつか挙げてみます。

有酸素運動しか行わない

加齢に伴う基礎代謝量の減少を補うためには、適度に負荷をかけた運動を行うことが大切です。有酸素運動は比較的強度が軽いため、取り組みやすいことが特徴として挙げられますが、有酸素運動のみを行っていてもなかなか体重が減少しないということはありませんか?

ウォーキングやジョギング、自転車運動、水泳など、話をしながらできる程度の運動を続けることはもちろん大切で、運動をしないよりもずっと良いことなのですが、基礎代謝を上げるためにはこれだけでは不十分であることがわかります。

毎回重い負荷をかけてトレーニングをする必要はありませんが、適度に筋力トレーニングを行うことが体重コントロールにはより効果的であると言えるでしょう。

今まで筋力トレーニングをしたことのない人であれば、その場でスクワットを行ったり、ペットボトルを使って軽く身体を動かしたりする自重トレーニングなど軽負荷のトレーニングでも筋肉を引き締め、基礎代謝量アップに貢献します。ウォーキングやジョギングを行っている人は、ときどき山登りに出かけてより運動強度を上げることもよい方法です。

激しすぎる運動は免疫力を下げる可能性も……

適度な負荷をかけて行う筋力トレーニングは基礎代謝量のアップに効果が見込めますが、より大きな負荷をかけた方が効果的であるというわけではありません。

今まで運動習慣のなかった人が激しい運動をしてしまうと、翌日以降の筋肉痛だけではなく、関節を痛めてしまったり、体調を崩してしまったりといったことが考えられます。運動強度は少しずつ高めていくことが大切なので、疲れすぎて寝込んでしまうようなハードな運動は避けた方が無難です。

アスリートのように激しい運動を習慣にしている人は、運動後にしばらく免疫力が低下してしまうことも指摘されており、疲労困憊の状態で適切な休養と栄養をとらなければ、インフルエンザ等の感染症にかかりやすくなってしまうことも考えられます。自分の体力と相談しながら、少しずつ運動強度を上げるように心がけましょう。

準備運動をしないですぐに身体を動かすのは危険

毎日忙しい中で運動する時間を捻出するのは至難の業という人も多いと思いますが、ウォームアップなどの準備運動をしないまま、メインの運動を行ってしまうことも避けた方が良いでしょう。

運動をする前の身体は筋肉や関節の動きが硬く、この状態で筋力トレーニングや有酸素運動などを始めてしまうと、ぎっくり腰や太ももの肉離れなどケガを誘発してしまうことにつながります。準備運動は身体を少しずつ運動に慣らしていくものですので、この時間も含めて運動時間を捻出するようにしましょう。

同様に運動を行った後もそのままに終えてしまうのではなく、クールダウンと呼ばれる運動後の整理運動を行う習慣をつけましょう。具体的には使った筋肉や関節を中心にゆっくりとストレッチしたり、しばらくウォーキングを行って心拍数を整えたりといったことを行います。

こうした整理運動を行うことで、疲労物質が体内に長くとどまることなく、分解・代謝されることをうながします。加齢に伴って体力的な疲労は回復にも時間がかかる傾向にあるため、運動後のクールダウンもしっかりと行うことが大切です。

若い頃は短期間に多少のムリをすれば体重を落とすことが可能だったかもしれませんが、40代以降のダイエットは長期戦を見込んで臨むことが一番大切です。今行っている運動やエクササイズを見直しながら、身体によい生活習慣とともに長く続けられることをまず優先して取り組むようにしましょう。

(文:西村 典子(アスレティックトレーナー))

© 株式会社オールアバウト