最多安打の丸がMVPに選ばれたワケ、主要打撃タイトル無冠も“総合力”評価

セ・リーグMVPに選出された広島・丸佳浩【写真:荒川祐史】

打撃主要タイトルの獲得なしも圧倒的な支持

 セ・リーグのMVPに広島の丸佳浩が選出された。全286票のうち1位で196票を獲得。圧倒的な支持を得たと言ってよい。

 丸は今季最多安打に輝き、ベストナインにも選ばれたが、それ以外のタイトルはなかった。ただ、打率は5位、本塁打は8位、打点は3位、盗塁は11位、出塁率は2位と、オフェンスの主要部門すべてでハイレベルな活躍をしていた。

 最多安打は、1994年から表彰されるようになった打撃タイトルだ。当時オリックスだったイチローが年間210安打を記録したことに伴い、同年から新設された。

 これまで首位打者、本塁打王、打点王、盗塁王の主要タイトルを取らずにMVPを獲得した例は、昨年の新井貴浩(広島)に続いて通算22例目だ。

 以下がその顔触れだ。

1938年春 苅田久徳(セネタース)打率.299 5本 15点 7盗
1942年 水原茂(巨人)打率.225 0本 16点 2盗
1948年 山本一人(南海)打率.305 8本 68点 23盗
1951年 山本一人(南海)打率.311 2本 58点 19盗
1954年 大下弘(西鉄)打率.321 22本 88点 11盗
1955年 飯田徳治(南海)打率.310 14本 75点 42盗
1971年 長池徳二(阪急)打率.317 40本 114点 8盗
1973年 野村克也(南海)打率.309 28本 96点 3盗
1978年 若松勉(ヤクルト)打率.341 17本 71点 12盗
1982年 中尾孝義(中日)打率.282 18本 47点 7盗
1986年 石毛宏典(西武)打率.329 27本 89点 19盗
1987年 山倉和博(巨人)打率.273 22本 66点 3盗
1993年 古田敦也(ヤクルト)打率.308 17本 75点 11盗
1996年 松井秀喜(巨人)打率.314 38本 99点 7盗
1997年 古田敦也(ヤクルト)打率.322 9本 86点 9盗
2000年 松中信彦(ダイエー)打率.312 33本 106点 0盗
2003年 城島健司(ダイエー)打率.330 34本 119点 9盗
2005年 金本知憲(阪神)打率.327 40本 125点 3盗
2007年 小笠原道大(巨人)打率.313 31本 88点 4盗
2010年 和田一浩(中日)打率.339 37本 93点 5盗
2016年 新井貴浩(広島)打率.300 19本 101点 0盗
2017年 丸佳浩(広島)打率.308 23本 92点 13盗

 1938年春のセネタース苅田久徳を除く21人が、優勝チームから選ばれている。

 1948、51年の南海・山本一人(のちの鶴岡一人)、1973年の南海・野村克也はプレイングマネージャーだった。また、1973年の南海・野村克也、1982年の中日・中尾孝義、1987年の巨人・山倉和博、1993、97年のヤクルト・古田敦也、2003年のダイエー・城島健司の5人6例は捕手。攻守の要としてチームを引っ張ったことが評価された。

 これらの選手も含め、21人の“ノンタイトル”MVP選手は、すべて「優勝チームを引っ張った」リーダーシップを評価されたということが言えよう。打撃タイトルは取れなくても、総合力で打線の核となるとともに、チームリーダーとしてチームメイトを引っ張った。そういった数字に表れない部分の活躍も評価されての受賞と言えるのではないだろうか。

 この顔ぶれの中から、苅田久徳、水原茂、山本一人、大下弘、飯田徳治、野村克也、若松勉、古田敦也の8人が野球殿堂入りを果たしている。今後、殿堂入りが期待される選手も多い。

 丸佳浩は今回の受賞で、大選手への一歩を踏み出したと言えるだろう。

(Full-Count編集部)

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