【日立金属の事業戦略 カンパニープレジデントに聞く(2)】〈電線材料・村上和也執行役〉マグネットワイヤを拡販 独自材料・新設備で競争力強化

――基盤製品の市場環境をどう見ているのか。

 「建設用電線は五輪需要が2018年度には本格化し、五輪後も大きな落ち込みはないと見ている。機器用電線は産業機械や半導体関連需要が活況でフル生産となっており、増強投資を進めている。長期的にも伸びるので日本・ベトナム・中国で生産最適化と増量対応を図る。マグネットワイヤは産業機器やxEVのモータ向けで受注が拡大。欧州のEV志向の高まりも追い風で、25年度までに売上高を5割以上増やしたい」

――成長分野の需要については。

日立金属電線材料・村上執行役

 「鉄道車両用電線は中国で高速鉄道向けが非常に好調で来期もこの勢いを保てそうだ。国内向けは安定的に受注を獲得できている。医療関連ではチューブで年率1割程度の伸びが見込める。プローブケーブルは海外向けを含め堅調に推移しているし、中国でケーブル製造や組み立ての工程を集約し、一貫体制にした効果も出ている。自動車電装部品は全製品群が好調で中長期的な伸びが期待できる」

――18年4月には茨城工場で電線導体の新型連続鋳造圧延ラインが本稼働する。

 「合金添加など独自技術を導入し、エネルギー効率や生産性の高いラインにする。IoTの積極的な導入では既存ラインにセンサを取り付け基礎検討を進めてきた。新ラインではさまざまなデータを生産性向上や品質安定化に結び付けたい。また当社の独自材料であるHiFCを量産できるようにする。既存ラインは稼働半年後をめどに休止する」

――HiFCでは軽量化などさまざまなメリットが創出できる。

 「HiFCは銅に微量のチタンを添加し特性を高めた材料。電気抵抗が抑えられマグネットワイヤで使用すれば約2%の軽量化が可能になる。溶接の信頼性を保てる特性もあり、高価な無酸素銅からの代替ができる。無酸素銅と比較して柔軟性が高いことも利点だ。お客様からは非常に魅力的な材料として捉えてもらっている」

――マグネットワイヤでは設備投資や磁性材料とのシナジーによる強化策も。

 「茨城工場で、高速で高生産性の生産ラインを18年度上期に稼働させる。その後は需要に合わせて増設していく。増設する拠点は茨城とタイのほか、xEV関連需要が見込まれる欧米や中国なども視野に入れていく。磁性材料カンパニーとのシナジーでは、マグネットワイヤと磁石を合わせてプレゼンする取り組みも始めている。まずは営業、次は技術でお客様と深く関われるようになってきている。技術開発本部の主導でモータの特性を切り口にした開発連携も検討している」

――他カンパニーの事業との相乗効果は。

 「例えば素形材カンパニーの配管機器とは、建設用のお客様に対する営業で連携している。技術面では同軸ケーブルで培った技術をガス用のフレキシブル配管にも生かしているし、新製品の創出にも繋げたい」

――鉄道車両用電線の施策は。

 「需要拡大に対応し昨年中国で独自技術を生かした新ラインを導入しており、その後もさらなる成長を目指し増産投資を進めている。特別高圧ケーブルやそれを繋ぐためのケーブルヘッドにも力を入れている。欧州では提供された三次元の図面を元にしたハーネスの製作や配線手順を作業者のタブレット端末向けに落とし込むサービスを展開し、お客様の工数を大幅に削減できた。新たな価値の提供で信頼関係を強化できるので力を入れている」

――医療分野の拡大にも注力している。

 「医療用チューブでは昨年2月に買収した米HTPメッズ社で電線とコラボレーションした製品の引き合いもいただけるようになってきた。特徴的な製品では耐圧編組チューブはフル生産で、非常に高いシェアを得ている」

――自動車電装部品については。

 「電動スライドドア用センサは今後も伸びていく。ABSで使う車輪の回転を計るセンサは電動パーキングブレーキと同じ場所に配線するため、EPBハーネスと一体化した製品の要求が強まっている。EPBハーネスは受注が増えているので順次増産投資を進めたい。電動パワステ用トルクセンサも好調で、タイがフル稼働なのでメキシコで増やして当面の需要に応える。さらにニーズが拡大すれば消費地に近い欧州や中国での投資も考えなければならない。新商品では車載モータの口出し部分の配線合理化製品に期待している」(谷山恵三・古瀬唯)

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