【日立金属の事業戦略 カンパニープレジデントに聞く(3)】〈素形材・渡邉洋執行役〉耐熱鋳鋼、年度内に赤字脱却 「ワウパカ」軸に米事業強化

――製品分野別に将来展望を伺いたい。自動車用耐熱鋳鋼「ハーキュナイト」は需要旺盛で、月産能力を1350トンへと2016年度上期比8割拡大したが。

 「ターボハウジングを中心に需要は本当に強い。収益面はまだ苦しんでいるが、お客様に価格是正をお願いする一方、モノづくりは着実に改善しつつあり、今年度末までにブレークイーブンにできる」

 「海外における耐熱鋳鋼の機械加工は、北米はワウパカ、中国、欧州ではアウトソーシングで立ち上げている。九州工場でのモノづくりを確立した上で、さらなる増強計画を検討する。ワウパカでも耐熱鋳鋼を生産する可能性を含めて、お客様の要望を踏まえて今中期で意思決定し、次期中期に実行したい」

日立金属素形材・渡邉執行役

――アルミ製品はどうか。アルミホイールの低収益に苦しんでいるが。

 「アルミホイールもハーキュナイトと同時期の赤字脱却を目指している。上期出荷は生産能力に対して日米とも低いレベルにとどまった。米AAPは乗用車の減少、お客様の新車投入の後ずれも影響した。モノづくりにも問題があったので、設備レイアウト見直しやマネジメント改革を進めている」

 「ワウパカは『ワウパカ・ウェイ』という米国流のモノづくりのマネジメントを確立している。このノウハウを導入して生産効率向上を進めており、10月の生産個数は前月比2割以上に高まった。下期の稼働は上期比10~15%改善する。生産効率はさらに2割向上を目指していく」

 「熊谷はしばらく我慢の時期が続くが、この間に自動化や生産安定化などモノづくりを鍛え直す。新材質で強度を上げて軽量化し、新加工方法と組み合わせる新製品にも挑戦している。金型については、日立金属工具鋼と共同で10月に金型プロジェクトを立ち上げた。金型材の選定、金型の設計・加工の効率化などで成果が出始めており、1年がかりで取り組む計画だ」

 「アルミ鋳物では、子会社のアルキャストがxEV用のバッテリーケース、モーターケースの引き合いを頂いている。鋳造機などの設備増強が必要で、お客様の製品の立ち上げ時期を見越して増強投資を順次行う。今後2年以内に第1期を実行し、総額では数十億円を見込んでいる」

――鉄鋳物世界最大手のワウパカ買収から丸3年が経つ。ワウパカの状況は。

 「今年前半は乗用車需要が減少したが、非乗用車向けを伸ばし、計画通りの業績を挙げられた。将来は農機・建機・産機・商用車向けを大きく伸ばして、事業の半分を占めるようにしたい」

 「ワウパカは8工場体制で、加工専門の1工場以外の7工場で鋳鉄を生産している。このうち2工場はダクタイル鋳鉄専用工場化した。生産品目に合わせた設備集約や自動化、効率化も進める。水平割鋳造ラインは大型鋳物に適している。今後、非自動車分野を拡大していくために次期中期で実行したい。事業拡大を視野に溶解能力の増強も行うので、投資額は100億円規模になる」

 「ワウパカはグローバル調達体制における北米の中核拠点にも位置付けている。磁石など他カンパニー工場を含めた調達機能でも貢献は大きい」

――真岡の鋳鉄事業に関しては。

 「真岡の鋳鉄生産規模はワウパカや韓国・南陽金属に及ばないが、ティア1として設計提案できるのが強みだ。素材研究所と連携し、開発・設計・試作・評価まで、設備・装置を含めて充実した機能を持っている。真岡で開発、設計した製品を米韓でも生産展開していく。アジアでは真岡の高効率鋳造ラインを南陽金属にも展開している」

――配管機器についても伺いたい。

 「配管機器は需要も売上げも安定している。桑名工場では精密ガス流量制御用のマスフローコントローラが半導体製造装置向けに好調で、能力を超えた引き合いをいただいている。中国拠点を含めて現有能力でフル生産を続ける計画だ」

 「桑名ではステンレス製フレキシブル配管システムの増産、鋳物配管継手の生産性向上などで約30億円を投じる。桑名の大型投資はほぼ30年ぶりであり、もっといい工場になる。フレキシブル配管の増強は米国でも検討する。配管機器事業はセンシング、予兆診断機能を含めて拡大できるし、電線材料カンパニーとのシナジーも営業、技術など多方面で期待している」(谷山 恵三)

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