川崎臨海部の「ビジョン素案」 川崎市が策定

 川崎市は22日、川崎臨海部の30年後の目指すべき将来像を示す「臨海部ビジョン素案」を策定した。産業構造の転換期にある臨海部が衰退しないよう、健康・医療、人工知能(AI)など新産業の創出や、コンビナートを形成する基幹産業の高度化などを官民で目指す方向性を打ち出した。

 同日の市議会総務委員会に報告した。ビジョンは有識者懇談会のほか、立地企業の意見を踏まえて策定。企業と行政が将来像を共有し、取り組んでいく九つの基本戦略と13本の先導プロジェクトで構成した。

 市内の法人が市に納める税金(約1千億円)のうち4割は臨海部の企業が納めているが、徐々に減少傾向にある。老朽化した設備の更新や、低・未利用地の有効活用を促し、交通インフラも整備して引き続き活力ある臨海部を目指す。

 30年後の将来像としては「豊かさを実現する産業が躍動し、新しい価値を生み出し続ける」「働く人や市民の誇りとなっている」などと定義。新産業の創出や基幹産業の高機能化、人材の育成・交流などの基本戦略を示した。

 10年以内に取り組む先導プロジェクトとしては、▽殿町・南渡田地区の「新産業拠点形成」▽設備の老朽化解消などを促す「資産活用・投資促進」▽高度な技能継承を地域全体で取り組む「人材育成」▽保育所や交流施設などを共同設置する「働きたい環境づくり」▽東扇島再編整備などを含む「港湾物流機能強化」−などを盛り込んだ。

 例えば「緑地創出プロジェクト」では、臨海部の緑地拡大と企業の老朽化設備の更新を同時に促す。工場立地法に定める条件通りに敷地内で緑地率を増やせず、設備更新ができない企業も少なくないため、敷地から離れた共通緑地を緑地率に換算する仕組みを検討する。緑豊かな憩いの場づくりも誘導したい考えだ。

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